編集長が語る!講義の見どころ
性と生物とLGBT(特集&長谷川眞理子先生の『LGBT』講座)【テンミニッツTV】

2021/09/03

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
「LGBT」ということが、よくいわれるようになりました。レズ(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体の性と心の性が一致しない人)の頭文字をとったものですが、この「LGBT」をどう捉えるべきか、多様性の大切さは理解しつつも、どうにもスッキリと考えがまとまらない方もいらっしゃるかもしれません。

LGBTに限らず、人間が生きていくうえでの様々なことを考えるうえで、「生物の仕組み」についての正しい知識を持つことが、大きなヒントや助けになってくれることが多くあります。また、生物の仕組みについての知識は、ちょっとした場で「うんちく」として語るうえでも、とても有効なもの。

本日は、そのことについての講座をまとめた特集と、長谷川眞理子先生の講座を紹介いたします。

■本日開始の特集:知れば知るほど不思議な「生物の仕組み」

「実は『性』があるのは不思議なことで、いくつもの謎がある」という問いかけから始まる長谷川眞理子先生の講座。受講しただけで生物の不思議を感じずにはいられなくなり、その謎について知りたくなること、うけあいです。今回は、そんな「不思議」をいくつも感じることができるものを集めました。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=130&referer=push_mm_feat

長谷川眞理子:なぜ雄と雌はいるのか、LGBTについて進化生物学から考える
佐々木正人:ダーウィンが発見した「穴ふさぎのアフォーダンス」とは
長谷川眞理子:ダーウィンの提唱する「自然淘汰」と「性淘汰」とは?
田島木綿子:「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
浅島誠:カエルとヒトは同じ共通原理を持っている

■講座のみどころ:性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT

本日ピックアップするのは、このメールの冒頭でも述べたLGBTの問題について、長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学長)に生物にとっての「性」のあり方から迫っていただいた講座です。この講座の第4話で長谷川先生は次のようにおっしゃいます。

《今は知識を力にいろいろと社会を変えていこうということで、知識が重要になった知識基盤社会ですから、こういう知識は皆さんが共有して、ただのヘンな話ということでは終わらせないようにしたいと思います》

まさにこの長谷川先生のご指摘どおり、本講座は「性」の複雑なメカニズムを知ることができ、そこから「LGBT」の本質について考えることができる、まことに稀有な優れものです。

◆長谷川眞理子:性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(全4話)
(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌はいるのか、LGBTについて進化生物学から考える
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4130&referer=push_mm_rcm1

長谷川先生のお話は、「なぜ雄(オス)と雌(メス)という性があるのか」という問題提起から始まります。

長谷川先生は《実は「性」があるのは不思議なこと》とおっしゃいます。生物には、「無性繁殖(分裂したり芽が出たりして、性を介さないで繁殖すること)」や「単為繁殖(雄がおらず雌だけで、受精しない卵を産んで繁殖すること)」などがあって、それはそれでうまくいっているので、なぜ「性」が必要なのか、ということです。

しかも、数学的に解析すると、無性生殖にくらべて、有性生殖は効率が悪い。自分の繁殖相手を、個体のなかに半分しかいない別の性から探さなくてはならないからです。

にもかかわらず、なぜ有性生殖をするのか。これについて、長谷川先生は「多様性の創出こそが大事だった」と指摘されます。自分の遺伝子をそのまま複製して増えていくのでは、遺伝子の状態が全く同じものがずっといるだけになってしまう。そうすると寄生者など外部のいろいろなリスクに対応できないからだというのです。

では、なぜ雄と雌が必要になるのか。それについて長谷川先生は、「卵と精子では、求められるものが違うからだ」とおっしゃいます。また、「雌雄同体」であったり「性転換」をしたりする動物よりも、「雄は雄、雌は雌」という生物が多い理由についてもご解説くださいます。ここはぜひ講義の第1話をご覧ください。

さらに長谷川先生のお話は、どのようなメカニズムで「雄」「雌」に分かれていくのかに進んでいきます。哺乳類の場合は、もともとのデフォルトは「雌」です。それがY染色体上の「SRY遺伝子」によって「雄」に作り替えられていくのです。

SRY遺伝子がスイッチオンになると、テストステロンという男性ホルモンが分泌され、それがいろいろなところに働きかけて、身体や脳が「雄」化されます。このときに卵巣も精巣に作り替えられ、外性器も変わり、性自認も雄となり、性的指向も変化します。

これはとても複雑な過程ですが、長谷川先生の講座を受講すると、その流れがとてもよくわかります。そして、この複雑な過程のなかで、確率的には必ず「性の不一致」という問題も出てくることも理解できるようになります。

いわば「性の不一致」は、精妙で神秘的な性のあり方のなかで「必然」ともいえる出来事なのです。

これまで宗教的に同性愛に対して厳しい目を向ける文化も各地にありました。かつてキリスト教国の多くでもそうでしたし、イスラム教国の多くもそうでした。日本の場合、文化や風習的には同性愛に対する壁はそうとう低かったと思われますが、「家制度」の枠組みの表面にはなかなか組み入れられるものではありませんでした。

そのような宗教的、社会制度的な背景を重んじつつ、しかし、生物学的な知識も含めて考えていく必要があることが、長谷川先生の本講座を受講すると、とてもよくわかります。

長谷川先生がおっしゃるように、「正しい知識を力にして、考えていくこと」の大切さがよくわかる講座です。ぜひご覧ください。

(アドレス再掲)
◆特集:知れば知るほど不思議な「生物の仕組み」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=130&referer=push_mm_feat

◆長谷川眞理子:性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4130&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は、「考え方・発想法」についての問題です。ではレッツビギン。

「   」を知らない人に「   」破りはできません。だから、考える「   」や発想のパターンを学ぶことは、レシピと同じで、非常に大切です。

さて「   」には同じ漢字一文字が入ります。何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3526&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて今回は、今月のプレゼント本を紹介いたします。

上野誠先生(國學院大學文学部日本文学科 教授/奈良大学 名誉教授)の著書
『万葉集講義-最古の歌集の素顔』 (中公新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/412102608X/

現在、シリーズ講義<「万葉集」の聖徳太子――語りかける人>が好評配信中の上野先生は万葉集研究の第一人者。その上野先生が『万葉集』の代表的な歌々を解説しながら、現存最古の歌集の実像に迫る注目の新書です。

ご応募がまだという方は以下よりぜひ。
https://10mtv.jp/
※「あなたにおすすめ」のところの「今月のプレゼント」でご確認ください。

なお、シリーズ講義<「万葉集」の聖徳太子――語りかける人>は以下よりご視聴できます。

◆上野誠:「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(全6話)
(1)日本人の憧れ
聖徳太子の1400回忌、「実在しなかった」説の真相に迫る
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4095&referer=push_mm_edt