編集長が語る!講義の見どころ
「激動と激変の時代」の日本復活戦略とは?(島田晴雄先生)【テンミニッツTV】
2022/05/10
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
なぜ日本は低迷が続いているのか。この危機の時代に、日本は何をすべきなのか。本日は、そのことに対して指針とヒントを打ち出してくださる島田晴雄先生(慶應義塾大学名誉教授)の講義を紹介します。
未来を切り拓いていくためには、明解なビジョンが必要不可欠です。島田先生は、菅政権と岸田政権を俎上に載せながら、「池田勇人内閣の所得倍増論」が成功した理由や、いま採るべき国際戦略・安全保障論にも視野を広げて、日本再生のための考え方をお話しくださいます。
◆島田晴雄:「激動と激変の時代」の日本復活戦略(全3話)
(1)菅政権から岸田政権へ
岸田政権に求められるのは強力な司令塔と日本産業の再生
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4389&referer=push_mm_rcm1
まず島田先生は、菅政権の事績を総覧されます。島田先生がもっとも強調するのは、2021年4月の日米首脳会談です。この会談にどのような意味があったのか。1年あまりを経た今から振り返ると、あらためてさまざまなことを考えることができます。
それ以外にも、さまざまなことを菅政権は手掛けていたことを見えてきます。それと比して、岸田政権はどうか? 島田先生は、「私の感覚からしたら、点数を付けろと言ったら、戦略になっていないので、あれはもう落第点です」とおっしゃいます。
とくに島田先生が強調するのは、「新しい資本主義」の問題点です。
岸田総理は、「新しい資本主義」と打ち出して新自由主義を批判し、「欧米主導の経済思想ではなく、今度は日本が主導したい」ともいっている。だが、本来、日本が注目すべきなのは、この40年間ずっと日本が凋落していることではないか。島田先生は、そう鋭く指摘します。
そして象徴的な数字として、「1980年代半ばには、日本は世界のGDPの15パーセントを占めていたが、その後、アメリカにプラザ合意と半導体協定で腰を砕かれてしまい、現在、世界のGDPの6パーセントしかない」という実状を提起されます。
ここで比較対象として提起するのが、池田勇人内閣の所得倍増計画です。島田先生は、下村治(経済学者)がどのような手法で「所得倍増」の下絵を描いたのか、さらに戦略産業にお金を集中させるために、どのようなことをやったのかを具体的にご解説くださいます。
島田先生のお話をうかがうと、当時の日本が、いかに小手先の思いつきだけではなく、しっかりとした国家戦略を検討していたかがよく理解できるようになります。その日本が、その後、どのように挫折したのかも含め、ぜひ講座本編をご覧ください。
第3話では、日本が考えるべき国際戦略が語られます。少し島田先生の言葉を引用してみましょう。
《もし台湾が有事になったら日本は巻き込まれます。そのとき、日本は避難や安全確保の準備ができているのでしょうか。軍事産業や生活物資の移動ができているでしょうか。これは大変なことで、ワクチンどころではありません》
《ただし、もっと重要なのは、戦争をさせない準備と知恵です》
《日本は中国の属国になる、あるいはアメリカの属国になるというのは、国益が許しません。では、誇りをもって付き合うには、どうしたらよいのでしょうか。やはり、日本独自の強烈な価値観が必要です。それは中国やアメリカではなく、地球益と人類益です》
そのうえで、「地球益」を考えて、2050年に再生エネルギー9割を真面目に実現すべきだとハッパをかけます。島田先生は、これは太陽光と地熱でできるとおっしゃいます。
太陽光については、日本全土にソーラーパネルを置けば、原発100基分の発電ができると試算しておられます。さらに地熱発電をどう進めるか。
《日本人は不真面目ですよ。私がもし特措法を活用できるような首相だったら、国立公園の法律をつくり直して、地熱発電所のないところは国立公園の認定をしません。そうすると、旅館業界は猛烈反対します。そしたら私は旅館業法を変えます。地熱発電所から温かい安定的なお湯を貰わないところは、旅館業を認めません。そうしたら、日本の総エネルギー必要量の3分の1は出ます。つまり、真面目さが足りないだけで、やろうと思えばできるのです。そういうことをやって、世界をリードします。それはみんな尊敬します》
また、バイデン大統領が中間選挙で大敗する可能性が高いが、それに対するBプランを用意しているのか。あるいは、習近平が独裁色を強めていくなかで、何かあったときの対処を真剣に考えているか。そのようなことも島田先生は指摘されます。
いまこそ、このような大きな構図に立脚した議論が必要ではないでしょうか。
(※アドレス再掲)
◆島田晴雄:「激動と激変の時代」の日本復活戦略(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4389&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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《環境問題を考えるときに、現在の肉食に関する畜産産業の形は変えるべきだ》
進化的に「おかしい」現代生活、どんな食事がよいのか
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4316&referer=push_mm_hitokoto
最後に、肉をたくさん食べるといいましたが、ヒトが肉食で進化したのはその通りです。ですが、現代の食肉産業による食肉の生産は、ものすごく環境負荷が高いのです。森林伐採をして牧場にして、そこに水を大量に入れる。そして、家畜がゲップをすることでメタンがたくさん出るなど、環境負荷が非常に高い。そのため、環境問題を考えるときに、現在の肉食に関する畜産産業の形は変えるべきだとよく指摘されます。
毎日こんなに安い肉を食べられなくなる日や、「今日は1年に1度のお祭りだから、少しだけお肉を食べましょう」という日が来るかもしれないといわれるくらい、食肉産業と食肉生産については環境問題から考える必要があるようです。
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今週の人気講義
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10分でわかる「死と宗教」
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
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ロシアと中国が軍事協力…日本が見るべきポイントとは
山添博史(防衛研究所地域研究部主任研究官)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4432&referer=push_mm_rank
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて、皆さま、5月8日から大相撲五月場所が始まりました。テンミニッツTVでは5年ほど前に大相撲についての講話を配信したことがあるので、紹介いたします。
横綱審議委員会メンバーが語る「稀勢の里の横綱昇進」
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1574&referer=push_mm_edt
この講話は、稀勢の里が横綱昇進という時期に横綱審議委員会メンバーであった山内先生がお話になったことですが、現在は二所ノ関親方として後進の指導をしている稀勢の里が中学生の頃にこう話していたそうです。
「自分は天才ではない。天才にはなれない。しかし努力はできる。努力で天才を負かす」
努力は嘘をつかないということでしょうか。できることをこつこつと行うということで、教養、学びも同じではないかなと感じる今日この頃です。
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