古事記・日本書紀と世界神話の類似
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
開けてはならぬ玉手箱をなぜ渡したか?浦島伝説の不思議
古事記・日本書紀と世界神話の類似(8)浦島伝説と死生観の関係
鎌田東二(京都大学名誉教授)
日本に古くから伝わる浦島伝説。しかし、そこにはとても不思議な点がある。なぜ「開けるな」という玉手箱をわざわざ渡すのか。それは、不老不死や長寿といった人間の死生観と関係があるのではないだろうか。この伝説から発せられるメッセージなどを読み解きながら、その謎に迫る。(全10話中8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分21秒
収録日:2021年9月29日
追加日:2022年5月8日
≪全文≫

●世界各所に不老不死伝説がある


鎌田 それ(『日本書紀』の浦嶋子伝説)が次の段階になると、さらに詳しくなります。それが『丹後国風土記』ですが、そのものは残っておらず、「残欠」といって他の本の引用から一部分が分かっており、『丹後国風土記』逸文という形で残されています。その中にこう記録されています。

〈雄略天皇の時代、水江浦嶋子はとても美男子だった。小舟に乗って、釣りに出かけた。3日3晩、1匹の魚も釣れなかった。しかし5色のカメ(亀)を得た。そのカメがいつしか美しい女性となった。そして「私は天上の仙人の家の者(天女)である」と名乗った。

 浦嶋子はその女性に眠らされて、気がつくと海の中の島にいた。そして、すばるの星とされる7人の童子と、あめふり星とされる8人の童子、それから女性の父母らに館の中に迎えられ、歓待されて3年間、海中の仙人の都にとどまった。

 ところが、故郷のことを思い出して、「神仙之堺」から俗世に戻ってくる。このとき、妻となっていた女は浦嶋子に玉手箱を渡して、「絶対に開けないように」と忠告した。そして浦嶋子は帰っていった。ほぼ3年間、海の中で過ごして帰ったところ、自分の家はない。「ええっどうしたの?」とよくよく確かめてみると、どうも300年のときがたっていた。自分を知る者は誰もいない。

 浦嶋子は絶望し、心乱れてしまって、「開けないで」と言われていた玉手箱を開けてしまった。そうすると瞬く間に姿かたちが年寄りに変貌した。「開けてしまうと二度と会えなくなってしまうのですよ」と言われていた通り、永遠の別れになってしまった。〉

 このような話です。この話はどう考えても変ですよね。

―― 変ですね。

鎌田 いろいろな不思議さがあります。海の世界での3年が地上では300年になっているのはいったい何を意味するのか。あるいは不死や不老長寿といった人間の死生観、などです。仙人の世界のイメージ、あるいは神は不老不死であるといった神々の世界のイメージが、人類の中にはあります。私たちは現代の科学技術を駆使して、例えばクローンの創造ということで、今いろいろな動物などで作ったりしているでしょう。そういったことは、神話的な物語の中という別の語りのパターンで起こっているのです。

 その1つのイメージが不老不死です。不老不死を求める話は、ギルガメッシュの話の中にも、秦の始皇帝の話の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
金融政策正常化の難しさ(2)今後の可能性と日本への影響
欧米で高まる金融政策正常化の背景と今後の可能性
植田和男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将