「任せる経営」を自分の経営スタイルにしていたという水野氏。「任せる経営」とはソニーグループの元CEO平井一夫氏の言葉でもあるが、大事なのは、「見ているふり」をすること。そして、敗者復活戦がある会社は絶対に成長するという。どういうことなのか。多角化には上意下達ではなく“下意上達”が大事だという話とともに、その意味について伺った。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●大事なのは「見ているふり」をすること
―― そういう中で、先ほどの人事的な部分でいうと、多少、専門型のタイプとマネジメント型とをまたぎながら……。
水野 やっていくところがあると思います。
―― そのあたりも非常に興味深いところですね。
水野 やはりそこは人を動かしていく。「ここに入ったら一生……」という会社もあるとよく聞きますが、そうではないやり方が、その人の未知なる資質を開花させてあげるケースはすごくあるのではないでしょうか。
―― 逆にいうと、上の人はそれをどう見抜くか、見つけるかが、非常に大事なポイントになりますね。
水野 そうですね。私自身がそうでした。もともとマスコミ希望でしたから。CBS・ソニーが第一希望ではなく、CBS・ソニーにソニー・マガジンズという出版のビジネスがあって、マスコミ志望ですから「ああ、こういうことをCBS・ソニーはやっているんだ」と。当然、音楽は好きですから、レコードの制作とか音楽関係ができれば面白いし、マスコミの部分でいうと、ソニー・マガジンズみたいなことをやれたらいいなと。
そういういい加減な人間だから、最初に配属されたのはソニー・クリエイティブというキャラクターの会社です。キャラクターなんて、まったく分かっていなかった。そこで営業から入って、マーケティングみたいなことをして、企画もやり、といった具合で、その会社の社長になんと20年ほどいてしまった。
その間に転職も考えました、いっぱい。でも結局20年、ソニー・クリエイティブにいて、ある種キャラクタービジネスのオーソリティみたいになった。そうしたら、ソニー・ミュージックコミュニケーションという、ソリューション系の会社の代表に動かされて。そしてソニー・ミュージック全体の社長になったのです。
逆にいうと、ソニー・ミュージック全体の社長になったのに、ソニー・ミュージックの祖業の音楽もアニメも経験していないのです。でも、そういう人間だったから、私は最初自分の人事について「何を考えているんだ?」と思いました。でも、その経験の中で、私は育てられたと自分では思っています。
―― それはどういう点ですか。育てられたとは。
水野 多角化経営も1つです。だから先ほど(講義編で)の「遠心力」「求心力」は、自ずと身につきました。任せる経営。(元ソニーグループのCEO)平井(一夫)さんも言って...