2025/05/27

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

5月27日は、日露戦争における「日本海海戦」が行なわれた日です。明治38年（1905年）のことですから、ちょうど120年前となります。

折しも今年は、第二次世界大戦終結から80年の節目でもあります。120年前と80年前……。日露戦争というと、だいぶ遠い過去のように感じますが、先の大戦の敗北から40年前ということを考えると、何ともいえぬ感慨を覚えます。とりわけ、自分の人生の時間や、現代の出来事と引き比べてみると、「ああ、そんなスパンだったのだなあ」と思う方も多いのではないでしょうか。

本日は、この「日本海海戦」について、山下万喜氏（元海上自衛隊自衛艦隊司令官）にお話しいただいた講義を紹介いたします。

もちろん、われわれは日本海海戦の結果を知っています。しかし、もし自分が、当時の連合艦隊を率いる身であったら、どう決断したのでしょうか。今回の講義では、山下氏が「もし、自分が東郷平八郎だったら」という見地から、リーダーの決断のあり方についてお話しくださいます。

山下氏は、現在、アメリカや西側諸国（含む自衛隊）が採用している「意思決定プロセス」をベースにしつつ、その決断を分析していきます。これは明治時代の日本海軍にはなかった考え方だといいますが、現代の手法でアプローチすることで、決断に向けて考慮しなければならないことが浮き彫りになってきます。

◆山下万喜：戦史に見る意思決定プロセス～日本海軍の決断（全4話）
（1）日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか？
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=846&referer=push_mm_rcm1

講義の冒頭で、山下氏は次のように指摘します。

《この意思決定プロセスは、軍事の分野のみならず、一般の社会においても重要な決心を迫られるときに通用するものであると考えています》

まさに、ご指摘のとおりでしょう。

そのうえで、現在のアメリカや西側の「意思決定プロセス」を、スライドを用いて、わかりやすく詳述くださいます。

決断するにあたってまず何が大切かが。そのことが、とてもよく伝わってきます。さらに、自分が何をして相手が何をするのかについて、マトリックス分析の手法の解説へと進みます。

たしかに、マトリックスなどを用いずに考えていくとき、ある1つの考えや発想が頭を占めると、その考えばかりが頭を巡ってしまうことがよくあるものです。すると、その考えにとらわれてしまって、大いに決断を誤まりかねません。

なるほど、マトリックスで分析することで、そのようにとらわれてしまうリスクを「軽減」（全部なくすことは無理としても）できることが見えてきます

さらにマトリックスをつくったうえで、スィータビリティー（どの程度役立つか）、フィージビリティー（実施できるか）、アクセプタビィティー（結果に耐えられるか）の3つの観点から比較検討していくのです。

その手法を用いて山下氏が分析するのが「連合艦隊が、バルチック艦隊をどこで迎え撃つべきだったか」です。

日本海海戦は海外では「対馬沖海戦」と呼ばれるように、史実では対馬海峡を進んできたバルチック艦隊を、日本艦隊が迎え撃ったわけです。しかし当時の日本海軍からすれば、バルチック艦隊がどのルートを通ってくるかは、大いなる迷いと悩みの焦点でした。その決断を間違えてしまうと、相手を取り逃がしてしまうことにもなりかねないからです。

ここで山下氏が示してくださるマトリックスによる具体的な分析は、様々なケースにおける可能性が一覧できて、とても興味深いものです。

このように可能性を列挙したうえで、スィータビリティー、フィージビリティー、アクセプタビィティーの3つの観点から検討すると、何がわかるのか。

それについては、ぜひ講義本編をご覧ください。現代的手法を用いることにより、むしろ当時の東郷平八郎が「自らの使命を全うするため」にいかなる判断を下したのかが、クリアに理解できます。まことに学ぶところの多い講義です。

なお、この山下氏の講義では、第2話以降で、第2次世界大戦における真珠湾攻撃への山本五十六の決断、ミッドウェー海戦における南雲忠一の誤断、レイテ沖海戦における栗田艦隊の「謎の反転」を分析していきます。成功例のみならず、痛恨の失敗例も見ることで、さらに分析プロセスへの考え方を深めることができます。ぜひ併せてご覧ください。


（※アドレス再掲）
◆山下万喜：戦史に見る意思決定プロセス～日本海軍の決断（1）
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=846&referer=push_mm_rcm2


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