医療から考える国家安全保障上の脅威
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本のインテリジェンスは大丈夫か…行政機関の対応に愕然
医療から考える国家安全保障上の脅威(4)国家インテリジェンスの課題
山口芳裕(杏林大学医学部教授/高度救命救急センター長)
「日本のインテリジェンスは大丈夫なのか」という声が海外から聞かれるという。例えば北朝鮮のミサイルに搭載されている化学剤について、「エイジング」と呼ばれる拮抗薬投与までの制限時間の観点からはまったく見当違いの神経剤を想定していたことが明らかになった。今回は、こうした日本のインテリジェンスの課題について、2017年北朝鮮のミサイルに関する安倍総理(当時)の発言、2007年中国冷凍餃子事件などの事例を挙げながら解説する。(全5話中第4話)
時間:11分56秒
収録日:2024年9月20日
追加日:2025年5月22日
≪全文≫

●日本のインテリジェンス能力が問われた首相発言


 では、健康医療安全保障の4回目。今回はわが国の国家インテリジェンスの課題や問題点についてお話をさせていただきます。

 わが国のインテリジェンスが問題になった事案が、過去何回かございます。その一つは2017年、当時の安倍晋三総理が参議院の外交防衛委員会で発言された内容です。元安倍総理は、なんと言われたかというと、当時、頻繁に打ち上げられていた北朝鮮のミサイルの弾頭にサリンが装備されている可能性があるということを、この外交防衛委員会で発言されたわけです。

 歴代の総理がそこまで突っ込んで、北朝鮮のミサイルの具体的な脅威について言及した例はありませんので、われわれ安全保障の関係者にとっては非常に英断というか、素晴らしいという捉え方をした次第です。

 これを受けて、その後の記者との質問の中で、同じく当時の官房長官でおられた菅義偉氏が、「それが使われた場合の拮抗薬も国家として常備、備蓄している」という発言をされました。

 そこまではよかったのです。しかしながら、実際に北朝鮮がこのときミサイルの弾頭に詰めようとしていたのはサリンではなく、ソマンという剤でした。サリンもソマンも化学兵器ですし、両方ともその中の神経剤というグループに属するものですから、剤が違ってもそれほど大きな問題はないのではないかと感じられるかもしれませんが、万が一これが使われたときに命を救おうとするわれわれからすると、これは大きな違いがあるのです。

 いろいろ違いはありますが、一番大きな違いは拮抗薬を使うまでの制限時間の違いです。実際にサリンに暴露されたときに拮抗薬であるPAMを使う制限時間は3時間といわれています。これは「エイジング(Aging)」といって、サリンそのものが化学変化を起こしてしまうので、3時間以降に使ってもまったく効果が得られないわけです。ですから、3時間以内にこの治療薬を使えば、効果が期待できる。

 ところが、ソマンに関しては、このエイジング時間が3~5分と極めて短い。ですから、もし暴露した場合には、この時間内に拮抗薬を使わなければ、それ以降拮抗薬を使っても何の効果も得られないことになるわけです。菅官房長官が言われたように、東京都内の某所に当時7000アンプルのPAMが備蓄されていましたが、こ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治