編集長が語る!講義の見どころ
いまこそ学ぶべきインテリジェンス・ヒストリー入門/中西輝政先生【テンミニッツ・アカデミー】
2025/12/16
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
日本と中国との対立が深まるなか、中国による対外的な「反日」発信も強まっています。もちろん、これらが「情報戦」の一環であることはいうまでもありません。
「情報戦」「インテリジェンス」……。これらがいかに世界を動かしているのか。いまこそあらためて、そのことについて学んでおくべきでしょう。
物事を正しく、効果的に進めるためには、しっかりした情報に基づかなければならないことはいうまでもありません。そのような情報をしっかりと収集し、分析していくことが、いわゆるインテリジェンス活動の基盤です。
しかも、インテリジェンスへの理解を深めると、世界史や外交史も、その見え方が一変するのです。
本日は、中西輝政先生(京都大学名誉教授)に、インテリジェンス・ヒストリー(情報史)について語っていただいた講座を紹介いたします。中西先生は次のようにおっしゃいます。
《インテリジェンスの歴史として、例えば昔のイギリスやベネチア、フィレンツェが参考になるでしょう。こうした小さな国が、自由を謳歌しながら商業的に非常に栄え、なおかつ小さな存在なのに国際関係では結構重要な役割を果たしてきました。それは、情報を非常に上手く集めたからです。歴史を学び、こうした秘密を解き明かしていけば、日本人にもインテリジェンスのことが非常に腑に落ちて、理解しやすくなるでしょう》
まさに、ご指摘のとおりでしょう。とりわけ、現在のような激動の時代には、インテリジェンスの深化は必須です。世界を正しく見極めるために、ぜひ学ぶべき講座といえましょう。
◆中西輝政:インテリジェンス・ヒストリー入門(全11話)
(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2144&referer=push_mm_rcm1
中西先生は、第1話で「インテリジェンス」が必要不可欠である理由を詳述くださいます。
まず中西先生が指摘されるのは、政治を進めていくうえでは、とりわけ国際政治について判断するときには、何よりも「早く見つけ、おもむろに行動する」ことが重要だということです。
早く見つければ、集めた情報を的確に分析することができます。そしてその情報分析をもとに、どのように行動対処すべきか、十分な時間をかけて検討することができます。
しかし、日本の近現代の姿を見ると、えてして「遅く見つけて、慌てて行動する」ということになりがちだと中西先生はおっしゃいます。「これでは、やはりろくな結果になりません」というのですが、まったくご指摘のとおりでしょう。
次に中西先生が指摘されるのは、物事を交渉するには、粘り強く主張を一歩も譲らないことが重要だけれども、「ここぞ」という潮時には、潔く譲歩して交渉をまとめることが必要な場合もある……ということです。
その見極めを支えるものも「情報」です。思えばこれは、国家の外交から、商売の進め方、ひいては個人の買い物の値引き交渉に至るまで当てはまる話でしょう。
しかし中西先生は、こと日本の外交を見ていくと、「比較的簡単に譲歩してしまうかと思うと、とっくに終わっている問題を、いつまでも潮時が見つからなくて、踏ん切りがつかずにずるずると尾を引いていることもたくさんある」といいます。
ここも、まことに耳の痛い話です。
さらに強調されるのが、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」「戦わずして勝つ」ということです。
日本人は、「正々堂々と戦闘で勝つこと」を良しとする美学も持っている。しかし、それではあまりにも犠牲やコストが大きすぎる。戦わずして勝つためには、情報を活用し、ときには秘密工作を駆使することもある……むしろ、そのようなあり方を「理想」とする哲学を持つべきだというのです。
では、日本人はインテリジェンスをどのように学べばいいのでしょうか。現在では、世界中の大学がインテリジェンス講座を持っているのに、日本の大学教育では、インテリジェンス研究が根付いていません。
その状況を受けて中西先生は、「日本人は歴史から入ったほうが、しっくりと理解できる」とおっしゃいます。
そして第2話から、具体的にインテリジェンス・ヒストリーを紹介くださるのです。
第2話では、古代から江戸時代まで、日本は非常にうまくインテリジェンスを活用してきた伝統があるのに、なぜ近代になってそれが抜け落ちてしまったかが語られます。ここは、日本の近代化を考えるときに、とてもおもしろい観点です。
しかし、それでも近代日本は頑張ってインテリジェンス体制を構築していきます。有名な明石元二郎もそうですし、昭和になると小野寺信や杉原千畝のような素晴らしいインテリジェンスオフィサーが出てきます。
中西先生は第3話で、陸軍中野学校の創設がもう5年早ければ、日本は対英米戦には踏み切れなかったかもしれないとおっしゃいます。まことに興味深いご分析ですので、詳細はぜひ講座本編をご覧ください。
第4話では、情報活動における技術革新と、カウンターインテリジェンス(防諜や情報セキュリティ)の重要性が語られます。
そして、第5話で語られるのが、現在、中国が行なっている情報活動の「実際」です。
これらも、まことに興味深い内容です。「ぜひとも知っておかねばならない話」ともいえましょう。
第6話、第7話では、インテリジェンス活動が、実際に他の国の政治を大きく動かした事例として、1940年のアメリカ大統領選挙で、いかにイギリスが情報工作を行なったかが紹介されます。
このとき、イギリスは欧州での戦争にアメリカを引き入れるために、ルーズベルトの3選を実現しようとします。では、何をしたのか。これまた「事実は小説よりも奇なり」。ぜひ講座本編をご参照ください。
そして第8話以降で、杉浦千畝やケンブリッジ大学の例などを分析しつつ、これから日本が外交安全保障や経済戦略をしっかりしたものとしていくために、必要となる考え方を詳述くださいます。
この講座を学ぶと、現在の危機の時代に、いかに日本が厳しい場所にいるのかが、明白に見えてきます。まずは「知ること」から始めるべきでしょう。まさしく、いまこそに必見の講座です。
(※アドレス再掲)
◆中西輝政:インテリジェンス・ヒストリー入門(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2144&referer=push_mm_rcm2
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