編集長が語る!講義の見どころ
戦争と平和をどう考える?…子どもたちと本質に迫る/小原雅博先生【テンミニッツ・アカデミー】
2026/03/10
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃開始(2月28日)から1週間余が経ちました。イランの最高指導者ハメネイ師をはじめ、イラン革命防衛隊の司令官など多くの要人が死亡。さらに大規模な攻撃は続いています。
指導者の所在が正確に捕捉されて徹底的に攻撃され、さらに重要施設が次々と破壊されていく光景に、多くの方々が複雑な感情を抱いておられることでしょう。ロシアなどからは、「なぜロシアのウクライナ侵攻は国際的に非難されて制裁まで課されているのに、今回のイラン攻撃はそうならないのか」という非難の声も上がります。
しかし反面、イラン政府はこれまで苛烈な国内弾圧を行なってきてもいます。たとえば2025年末からイラン各地で拡大していた反政府デモでも、イラン国営放送は3000人以上が死亡したと発表しています(1万人~3万人が虐殺されたとの見方もあります)。また、イランの核兵器開発疑惑も、ヒズボラやハマスなどのテロ組織への積極的支援も、長年指摘されてきたとおりです。
今回のイラン攻撃を踏まえて、戦争と平和についてどう考えるべきか。皆さんはこの点について、いかなるご見解をお持ちでしょうか?
本日は、小原雅博先生(東京大学名誉教授)が、この問題をわかりやすく真正面から論じてくださった講義を紹介します。
じつは小原雅博先生は児童向け書籍として『こども戦争と平和』(カンゼン)という本を書いていらっしゃいます。子ども向けだからこそ、一切のごまかしは利きません。しかも、わかりやすく論じなければいけません。
ご一読いただければわかりますが、たんなる理想論ではなく、リアリズムの視点から真正面に「戦争と平和」について解説し、「こんなことまで」という論点まで取り上げられています。
今回収録したのは、その書籍にまつわり、子どもたちを招いて紀伊國屋書店で行なわれた公開講義です。参加されたのは子どもたちとその親御さん。しかも比較的に低年齢の子の参加率が高いイベントでした。
しかし、私も司会をしつつ驚いておりましたが、その小さいお子さんたちの反応も、まさに真剣そのもの。会場がダレることなどもなく、とても充実した時間となりました。しかも、そのように小さいお子さんたち相手だからこそ、議論はまさに本質を衝くものとなっていったのです。
子供向けの講義だからこそ、大人が見ても刺激されるものとなり、「ごまかしのない思考」のきっかけとなる。そのような講義となりました。
◆小原雅博先生:こどもと学ぶ戦争と平和(全6話)
(1)私たちに必要な想像力と戦争体験
なぜ戦争が起こるのだろう…大切なのは想像力と生の声
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6125&referer=push_mm_rcm1
講義の冒頭で小原先生は世界地図を示しつつ、子どもたちにウクライナやパレスチナという地名を聞いたことがあるかと問いかけます。驚くことに、小学生低学年を含む参加者のほぼ全員が手を挙げました。
小原先生は「想像力」の大切さを説きます。
《5万人とか3000人とかという数字は自分の頭に入るのだけれど、よく考えてみてください。僕が皆さんにお伝えしたいことは、この5万人とか3000人の子どもたちはそれぞれ1人ひとりがとても大事な存在で、その1人ひとりにその子たちが歩んできたそれまでの短い人生がある》
そして、その数字の背後に、数字に飲み込まれてしまったような一人ひとりのつらい思いがあるのだと。
ご指摘のとおりでしょう。ドローン攻撃の映像などは、あたかもゲーム映像のように映りますが、しかしその爆発の下にいる一人ひとりのことをどこまで想像できているでしょうか。
さらに小原先生は、ご自身の母親の空襲の体験談を紹介されます。「焼夷弾」がザーザーと音を立てて降ってくる恐怖。さらに、古里に帰りたいと泣く生徒に「非国民」と一喝した校長先生の姿……。
想像すれば想像するほど、戦争の悲惨さは胸に迫ります。
それは世界中の誰にとってもそうでしょう。しかし、ではなぜ戦争がなくならないのか。そもそも、戦争がないことが平和なのか。
実は小原先生の『こども戦争と平和』でも、「日本は戦争に巻き込まれる危険がある、あるいは、どちらかといえば戦争に巻き込まれる危険がある」と答えた人が86.2パーセントにも上るという数字が紹介されています。今回の公開講義に出席された大人も子どもも、全員がその問いに「はい」と答えました。
では、戦争に巻き込まれたらどうするのか。ここも、多くの意見が出されるところです。
小原先生は、一人ひとりが「外交官」になるべきだと訴えます。学校でけんかやいじめがあったときも、話しあって問題を解決する努力を重ねる。その努力が、未来の平和につながっていくのではないかと。
とはいえ戦争はなくなりません。なぜなのか。ここはリアリズムに立脚して考えねばならぬ問題です。小原先生は、それを2つの要因から考えていきます。さらに、防衛力の強化について「なぜ戸締りをするのか」という視点から見ていきます。
そのうえで示されるのが、ビスマルクの「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という言葉です。さらに第6話の質疑応答では、おすすめの本として、チャーチルの『第二次世界大戦』が紹介されます。なぜ、チャーチルはナチス・ドイツに徹底的に立ち向かったのか。真の平和への道とはどういうことなのか。
それを考えるとき、ビスマルクの言葉がさらに意味深く響いてきます。
あらためて戦争と平和について考えをめぐらせるときに、あるいは子どもや孫たちと戦争と平和について会話するときに、大いに参考となる講義です。子ども向けと軽く見るのではなく、むしろ子ども向けの講義だからこそ自分自身にしっかりと問いかけながらご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆小原雅博先生:こどもと学ぶ戦争と平和(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6125&referer=push_mm_rcm2
----------------------------------------
今週の人気講義
----------------------------------------
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6131&referer=push_mm_rank
「これからベントをやる。メンバーを決める!」…決死の現場
門田隆将(作家/ジャーナリスト)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6150&referer=push_mm_rank
ポイントは財政悪化よりインフレ?…高市政権でどうなるか
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6139&referer=push_mm_rank
モンロー・ドクトリン進化の歴史…始まりは「ただ乗り」!?
東秀敏(米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6156&referer=push_mm_rank
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥(経済・経営ジャーナリスト)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5680&referer=push_mm_rank
公式X(@10mtv_opinion)では、毎日独自コンテンツを配信中!
https://x.com/10mtv_opinion
人気の講義ランキングTOP10
毛繕いを代行!?脳の大型化が可能にしたメンタライジング
長谷川眞理子
【10分解説】福島第一原発事故…吉田昌郎氏と現場の底力
テンミニッツ・アカデミー編集部
欧州では不人気…木村資生の中立説とダーウィンとの違い
長谷川眞理子