編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》「百人一首の日」に和歌を味わう…入門から深奥まで/渡部泰明先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】

2026/05/27

いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。

5月27日は「百人一首の日」です。

藤原定家の日記「明月記」の文暦2年(1235年)5月27日に、「親友の宇都宮蓮生 (頼綱)の求めに応じて書写した和歌の色紙が蓮生の小倉山荘(京都嵯峨野の中院山荘)の障子に貼られた」と記されていることに由来します。

滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ(大納言公任)

「和歌」はかけがえのない日本の文化です。しかも知れば知るほど、その味わいはどんどん増し、日本文化や日本の精神性への理解も深くなります。

今回の《今を知る》特集では、日本人として知っておきたい「和歌」の様々な側面をわかりやすく解き明かす講義をまとめました。「百人一首」から『古今和歌集』『万葉集』、さらに和歌のはじまりから和歌の不思議で高度な技法まで、ぜひとも学びましょう。


■今を知る講義まとめ:和歌を味わう…入門から深奥まで

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=292&referer=push_mm_feat

◆渡部泰明先生:『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2200&referer=push_mm_rcm1

◆渡部泰明先生:『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5143&referer=push_mm_rcm2

◆上野誠先生:『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4855&referer=push_mm_rcm3

◆鎌田東二先生:大国主神が詠んだ歌…『古事記』の歌の意味と縁結びの力
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5177&referer=push_mm_rcm4

◆渡部泰明先生:ぬばたまの、あしひきの……不思議な和歌のレトリックを学ぶ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2711&referer=push_mm_rcm5

◆鎌田東二先生:「国生み・国作り・国譲り・国治め」と「むすひ」の力
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4578&referer=push_mm_rcm6

◆平野多恵先生:おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5196&referer=push_mm_rcm7


■ピックアップ講義:百人一首の謎と魅力と奥深さとは?/渡部泰明先生

和歌はやはり、日本の大切な精神文化です。近年、若い方々のあいだでも、マンガなどの影響もあって「競技かるた」の人気が爆発したり、またSNSとの親和性の高さもあって短歌がブームになったりするなど、和歌の流れは脈々と伝わっています。

せめて百人一首の歌くらいは知っておきたい……とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

一方、百人一首の歌は昔覚えたし、という方も多いことでしょう。人口に膾炙(かいしゃ)しているだけに、ついつい「軽く」見てしまいがちな方もいるかもしれません。

しかし、渡部泰明先生(東京大学名誉教授/国文学研究資料館館長)はこうおっしゃいます。

《「『百人一首』に出てくるほど有名な歌なら、もう昔から解釈は定まっているだろう」と思われる方が多いかもしれませんが、決してそうではないのです。また、『百人一首』の歌自体、謎めいた歌が多いのです。ですから、解釈についても結構いろいろな方面から考えることのできる歌が多いということです。だからこそ『百人一首』は、これだけ愛されてきたともいえます》

この言葉どおり、渡部先生はこのテンミニッツ・アカデミーの講座で、解釈の奥深さ、面白さを、存分に教えてくださいます。和歌の何たるかをうかがい知るためにも、必見の講座です。

◆渡部泰明先生:百人一首の和歌(全5話)
(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2200&referer=push_mm_rcm8

第1話で渡部先生は、百人一首は「非常に謎めいていて、分からない部分がかなりある」とおっしゃいます。

渡部先生が挙げる「謎」は、

●「どうやって出来上がったのか」という成立の謎
●「なぜ、この歌人が選ばれているのか」という謎
●「百人の歌人たちから1首ずつ選ぶとして、この歌が本当に代表作なのか」という謎

の3つです。

現在の通説では、百人一首は、鎌倉期の1235年ごろに藤原定家が選んだとされます。しかし、藤原定家が選んだとしても、「なぜこの歌人?」「なぜこの歌?」という疑問は尽きないのです。

「謎ばかりではあるけれども、分からない、分からないと言っていてもしようがない」。そう渡部先生はおっしゃいます。われわれができることは、『百人一首』の歌をしっかり味わい、どういう歌なのかをしっかりと読むこと。これが何といっても大事なことだし、そこに始まってそこに終わるといってもいいというのです。

渡部先生は、大学の授業では1首につき最低でも90~100分をかけたりしたそうですが、このテンミニッツ・アカデミーの講義では、次の4首について各10分ずつのご解説をいただいています。

・在原業平
ちはやぶる神代も聞かず竜田川韓紅(からくれなゐ)に水くくるとは

・和泉式部
あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな

・皇嘉門院別当
難波江の葦のかりねの一夜ゆゑ身をつくしてや恋ひわたるべき

・藤原定家
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ

たとえば、在原業平の歌について。「ちはやぶる」といえば「神」の枕詞として有名ですが、この「枕詞」について渡部先生は、「昔のたとえで恐縮ですが」と語りながら、元プロ野球選手の清原和博選手が打席に入る前に流れたテーマソング「とんぼ」(長渕剛)の例を挙げます。

「こうした音楽がかかると、次にヒーローが登場してくるという期待感が、その場を満たす。枕詞はそれに近いものであったと考えると分かりやすいのではないかと、私は考えています」というのです。

ところで、この在原業平の歌は、せっかく「ちはやぶる神代」と持っていきながら、「も聞かず」と続きます。

普通、和歌の中で神代や神を出すときは、「神様がこうである」「神様が作ったものだ」といった言い方をするが、この歌が「神様の時代だって、そんなものはなかったはずだ」などというのは、飛び抜けて大胆なことだといいます。

なぜ、そのような大げさな言い方をしたのか。それについては、ぜひ講座の第2話をご覧ください。

次の和泉式部の歌は、『百人一首』の歌の中でも一番情熱的な歌ではないかと渡部先生は指摘されます。しかし、実は解釈にかなり議論の余地があるとして、様々な注釈書の訳を示しつつ、渡部先生ご自身の解釈をお話しくださいます。

渡部先生がまず注目されるのは上の句の「あらざらむこの世のほかの思ひ出に」です。この上の句は、実は屈折をはらんでいて、だからこそ実は2つの意味を掛けているのではないかと、渡部先生はおっしゃるのですが……。

それがどのようなことかは、第3話をご覧ください。

さらに、皇嘉門院別当の歌は奇跡的なまでに技巧的な歌であり(第4話)、藤原定家の歌は素晴らしい「本歌取り」で『万葉集』や『源氏物語』の世界観をまとっている(第5話)といいます。

この講座で渡部先生の歌の解釈のあり方を学んでいくと、「三十一文字」という限られた言葉のなかに、いかに内容を盛り込み、歌の世界観を広げていくのかが見えてきます。それこそ、和歌の面白みであり、深みでもあるでしょう。そしてそのようなあり方が、日本文化の確かな核心になっていることも伝わってくるのです。

日本人として、ぜひとも学んでおきたい講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)

■今を知る講義まとめ:和歌を味わう…入門から深奥まで
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=292&referer=push_mm_feat

◆渡部泰明先生:百人一首の和歌(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2200&referer=push_mm_rcm9


公式noteをフォローすると過去のメルマガも見られます!
https://note.com/10minacademy