編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》あらためて考える台湾危機/特集&垂秀夫先生、上杉有司先生【テンミニッツ・アカデミー】
2026/09/30
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
2026年9月24日、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席がワシントンで首脳会談を行ないました。
ここでトランプ大統領が「第二次世界大戦では、われわれは同盟国にさえなった」と述べたことが、様々に取り沙汰されています。
しかしいうまでもなく、第二次世界大戦中の中国は、国民党が率いる「中華民国」でした。現在の台湾につながる政権です。
1937年に国民党と共産党が「第二次国共合作」を行なって、中国共産党の軍隊も中華民国の軍隊組織の一部として日本と戦っていますので、まったく共産党が噛んでいなかったわけではありませんが、ともあれ、なんとも「微妙」な発言ではあります。
この発言は見方によっては、一種のリップサービス、あるいは皮肉交じりとさえ考えうるものですが、その一方で深刻な議題だったのが「台湾危機」です。
台湾と、中華人民共和国が今後どうなるかは、やはり今回の米中首脳会談の一つの「肝」でした。《習氏は米側に台湾独立に「反対」し、台湾問題を「慎重に処理」するよう求めた》(読売新聞)とされます。
しかし、米中がそれぞれ発表した首脳会談の「成果文書」には台湾問題は記述されませんでした。明確な合意には至らなかったということでしょう。
台湾危機は、依然としてくすぶり続けています。はたして、これからどうなるのか?
そもそも台湾で、どのような危機が考えられるのか。そして台湾ではいま、何が起きているのか。そして、実際に起こったとき、日本への影響は……?
今回の《今を知る》特集では、あらためて台湾危機を論じた講義をピックアップし、様々な可能性を考えるうえで、ぜひともふまえておきたい論点を掘り下げます。
■今を知る講義まとめ:あらためて考える台湾危機
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=178&referer=push_mm_feat
◆垂秀夫先生:浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5965&referer=push_mm_rcm1
◆上杉勇司先生:台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5969&referer=push_mm_rcm2
◆島田晴雄先生:習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4789&referer=push_mm_rcm3
◆江口克彦先生:台湾は台湾だから…李登輝著『台湾の主張』発刊への道程
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3715&referer=push_mm_rcm4
■講義のみどころ:台湾危機はどう起きるのか?(垂秀夫先生&上杉勇司先生)
台湾危機というと、当然のごとく「中華人民共和国が台湾に武力侵攻する」あり方が思い浮かびます。しかし、実際にはどのような可能性が考えられるのか。
今回のメルマガでは、垂先生と上杉先生の見方を紹介します。
◆垂秀夫先生:習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(全7話)
(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5965&referer=push_mm_rcm5
いうまでもなく垂秀夫先生は、毅然とした姿勢で駐中国大使を務められた方です。2025年6月に『日中外交秘録――垂秀夫駐中国大使の闘い』(文藝春秋)という回顧録も発刊されましたが、その本の帯に書かれたキャッチコピーは「中国が最も恐れる男」。
中国と常にタフに向きあい、改革派も含め多様な人脈を構築し、中国側から名指しで批判されてもいます。
その垂先生が、台湾危機をどのように見ているのか。
まず垂先生は、こうおっしゃいます。
《中国は台湾をどうしようとしているのか。日本的に見ればもう武力統一だけなのですが、実はそうではありません。中国の対台湾政策は、あえていえば三つあると理解してもらえばいいと思います》
そして、一番右手に「武力侵攻」があり、一番左手に「平和的統一」があり、その間に「グレーゾーン」があるのだといいます。
もちろん、「平和的統一」といっても、ただただ「平和裏」に行なわれるものではありません。それを実現するために、現に、台湾社会への様々な浸透工作が行なわれているのです。
その実態の一部を、垂先生はこう表現します。
《今、スパイに関する裁判がだいたい70件ぐらい行われているのですが、その3分の2は軍の関係のスパイです。だから、もうジョークにならない。「官邸にいました」とか「外務大臣の秘書官の1人はスパイでした」ということが、事実起きているわけです。もうスパイだらけで、しかも実はこれはたぶん氷山の一角です》
さて、その実態は? そしてそのなかで、台湾はいま「三つの疑い」を持っているというのですが……。
それらについてはぜひ、この講義本編をご覧ください。日本にとっても、けっして他人事ではないことが「痛感」される講義です。
◆上杉勇司先生:クーデターの条件~台湾を事例に考える(全6話)
(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5969&referer=push_mm_rcm6
今回紹介する2つ目の講義は、上杉勇司先生(早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授)が、台湾を事例に「クーデター」について考究くださった講義です。
そもそも、クーデターとはどのようなことなのか。
上杉先生は、「政権の権力者を一撃で交代させる行為」「担うのは支配階級に属する一派」という点を強調されます。そのように「クーデター」について論点を検討したうえで、ある種の頭の体操的に、「台湾でクーデターが起きたらどうなるか」を検討していくのです。
台湾クーデターのシミュレーションは、「まず、中国共産党率いる中国との平和的統一に賛同する政党が選挙で勝利する」ところから始まります。
中国共産党が認知戦、あるいは情報戦を駆使して、「軍事的侵攻が起こる」「経済封鎖をされて台湾が生き残れなくなる」「アメリカは助けてくれない」というような認知が台湾の中で広がっていく。そのなかで、たとえば51対49というような僅差で「平和統一派」が勝利を収める……。
こうしたなかで「台湾の自治」を重んじる勢力に呼応しつつ、国軍の一部が決起するというシナリオです。
では、台湾で「政権の権力者を一撃で交代させる行為」はいかに可能なのでしょうか。今回の講義では、台湾軍の配置図なども検討しながらその条件を読み解いていきます。
実は、クーデターを防ぐための仕掛けは、とりわけ独裁政権下ではさまざまに構築されています。
よくあるのが、軍隊などの実力組織においてある種の「二重権力」を設けることです。ナチスの「親衛隊」やイランの「革命防衛隊」のように国軍とは別に実力組織を設ける場合もあれば、中国共産党の「政治委員」のように、軍隊のなかに軍事将校とは別に、政治将校を設ける例もあります。
台湾の場合、そのような別立ての実力組織はありませんが、蒋介石の国民党による独裁以来、クーデターを避ける構えはいくつもつくられていました。
とすれば、どうすれば「中華人民共和国との平和的統一」に反対するクーデターが成功するのか?
ここで取りあげられるのが、フィリピンのピープル革命や、アラブの春の折のエジプトなどの事例です。クーデター部隊が台湾総統府を占拠した場合、その周囲に「中華人民共和国との平和統一に反対する人々」が数万、数十万と集まって、いわば人間の盾のように取り囲んだらどうなるか。そしてそのときに、中国共産党やアメリカはどう動くか?
さらに考えるべきは、クーデター後の「民政移管」です。
ここで興味深いのが、実際に台湾民主化を実現した李登輝さんの事例です。台湾では蒋介石の没後、その子息の蒋経国が総統を務めていましたが、1988年に急逝します。そのときに副総統だったのが李登輝さんでした。
李登輝さんは総統に就任して民主化を進めていきますが、そのときの手法が興味深いのです。
まず、当時の軍の最大の実力者であった参謀総長を国防部長にします。これは格上げでしたが、同時に、現場への影響力を削ぐ一手でもありました。さらにその後、彼を今度は国防部長から行政府のトップ(首相)に据えて、軍の統率権から完全に外すのです。
台湾でも、中国共産党における人民解放軍と同様に、もともと「党の軍隊」でしたが、その「国軍化」を進めます。急激な改革は軍が反発するので、10年ほどかけて様々な法整備をしていきます。法整備が完了するときには、李登輝さんは台湾民主化の揺るぎない基盤を確立していたのです。
このような李登輝さんの手腕は、「一撃で倒す」クーデターとは対極的ですが、両者を並べたとき、どのようなことが見えてくるのか。ここもとても興味深いテーマといえるでしょう。
今回の特集で紹介する講義はいずれも、様々な角度から深く考えていくことができる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
■今を知る講義まとめ:あらためて考える台湾危機
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=178&referer=push_mm_feat
◆垂秀夫先生:習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5965&referer=push_mm_rcm7
◆上杉勇司先生:クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5969&referer=push_mm_rcm8
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