●「CHIPS法」成立の背景と2つの側面
それでは皆さん、バイデン政権の半導体(産業)を支配しようという戦略があるのですが、ここをまずお話ししてみたいと思います。バイデン政権は半導体を支配する戦略として法律を作りました。これを「チップス・アンド・サイエンス・アクト(Chips and Science Act)」といいますが、「半導体製造促進法」というような訳ができます。チップというのは半導体のチップのことです。
バイデン大統領は2022年8月9日に、「CHIPS(チップス)法」といわれている、その法律を作って成立させました。その法律を作った背景には、アメリカがそれまで30年間続いたグローバリゼーション、つまりアメリカは世界1強で、世界中がアメリカと一緒にやってくれるのだという前提があり、それで(その法律を)作っていますから、アメリカは頭脳のファブレスの会社だけを持っていて、世界中に作らせれば半導体はできてしまうわけです。
それは最初のほうの講義で示した図にあるように、アメリカの比重がものすごく高いのは、そういう何重計算が入っていますから、あのようになるので、それはすぐには分からないのですが、そのようなことをやっていたのです。
ところが、(アメリカは)足元で半導体の製造をやっていないことに気がつきます。これは非常に危ないと。有事になったらサプライチェーンが止まりますから、アメリカが逆に干上がってしまうということに気がついたのです。
この法律には2つの側面があるのですが、1つは徹底的にアメリカの国内に半導体の生産拠点を持つこと、もう1つは中国を締め上げることです。それで、中国を締め上げるためにどうしたかというと、2022年10月7日に、商務省が中国に対する半導体の強烈な規制を課しました。
これは中国だけではなく、日本にもオランダにも、それこそ世界中に課したのです。アメリカという国は強引です。アメリカに強く言われると、他の国はついていかざるを得ないという状況になっていて、それを使って中国の首を絞めてしまおうという、2つの側面があるのです。
●中国の脅威は貿易ではなく情報だった
ただ、ここで皆さんと考えてみたいのは、なぜバイデン政権がそこまで厳しいことをするのか、ということです。トランプさんはとんでもない人で相当乱暴な人でしたが、しかし、ここまでは...