10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン
このエントリーをはてなブックマークに追加

習近平政権が語る「夢」は果てなき理想か? 現状肯定か?

中国の夢~中華から語る「普遍」(1)その思想的背景

中島隆博
東京大学東洋文化研究所 副所長 教授
情報・テキスト
習近平と馬英九(2015年11月7日)
習近平政権が掲げる「中国の夢」とは、どんな思想なのか。それは日本や韓国まで包摂する共同体への壮大な理想なのか。それとも中国のナショナリズムを覆い隠す隠れ蓑に過ぎないのか。東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が、新たな「中華」の社会哲学に斬り込む。(全3話中第1話)
時間:12:52
収録日:2016/01/21
追加日:2016/03/31
習近平と馬英九(2015年11月7日)
習近平政権が掲げる「中国の夢」とは、どんな思想なのか。それは日本や韓国まで包摂する共同体への壮大な理想なのか。それとも中国のナショナリズムを覆い隠す隠れ蓑に過ぎないのか。東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が、新たな「中華」の社会哲学に斬り込む。(全3話中第1話)
時間:12:52
収録日:2016/01/21
追加日:2016/03/31
≪全文≫

●「中国の夢」という挑戦


 今日お話ししようと思っているテーマは、「中国の夢」です。これは、皆さんも耳にされたことがあるのではないかと思います。今の習近平政権の大きなスローガンの一つだと思います。それ以前、例えば前の政権では、「和諧社会」のように、ハーモニーを強調するスローガンを出すなどしていました。和諧というのは、ある意味で非常に中国的な概念でもありますね。ところが今の政権では、それには飽き足らずに、さらに先を見据えた挑戦をしていこうとしています。

 「中国の夢」と言った場合、われわれがすぐに連想するのは「アメリカン・ドリーム」ですね。アメリカン・ドリームに匹敵するような、あるいはそれを凌ぐような中国の夢を語ってみせる。そこからさまざまな効果というのを引き出そうとしているのだろうと思います。では一体、この中国の夢とは、どのような夢なのか。何を目指そうとしているのか。その問題点はどういうものなのか。今日はそれを一緒に考えてみたいと思っています。

 ここ最近、10年間とはいきませんが、10年近いでしょうか、中国の夢という言葉の周りでさまざまに語られているディスコース(言説)があります。それは、一種の中国的な普遍を語るディスコースです。


●「中国の夢」は「中華の復興」に連なる思想だ


 例えば「天下」。古い言葉ですね。ところが、この古い言葉をもう一度使い直して、中国的な普遍を語ろうという動きがあります。あるいは「王道」。これも古い言葉です。しかも日本にとっては、戦前のことを考えますと決して他人ごととは言えないような概念だと思います。こういった言葉のリバイバルが進んでいます。

 これを考えてみますと、なかなか意味深いものだという気がします。例えば天下で言いますと、中国が近代西洋と出くわした時に、「世界」という概念に行き当たったわけです。自分たちが今まで考えていた天下とは全く違う普遍性が、近代西洋にはあった。それは、世界であり、中国は、実はその世界の一つに過ぎない。中国の言っている天下というのは、世界のサブ概念である。こういう非常にショッキングな経験をしたわけです。

 ところが中国は、今やもう一度天下を語ろうとします。これは、西洋的な普遍である世界に対する一種のチャレンジでもあろうかと思います。中国に、もう一度普遍を語る権利を取り戻そう。これが話のポイントだろうと思います。

 この中国の夢とは、ある意味で、「中華の復興」を掲げている思想的な文脈に連なるものです。中華の復興と言うと、例えば孫文ですね。孫文が、中華の復興という概念を掲げて、革命を行おうとしていた。それから、蒋介石。蒋介石も、例えば文化大革命と同時期ぐらいに「中華文化復興運動」という運動を行い、台湾にこそ「中華」の正統性があるのだと主張した。これは、今でも台湾では続いているものだと思います。これもやはり、「中華の復興」という思想に連なってくるものだろうと思います。


●習近平が語る「中国の夢」


 では具体的に、テキストを読み上げたいと思います。習近平が中国の夢に最初に言及したのは、2012年11月29日、中国国家博物館での「復興の道」展という展覧会を見学した時のことです。こんなことを言っています。

 「すべての人はみな理想や追及すべき目標を持っており、みな自らの夢を抱いている。今、みなは中国の夢について語っているが、私は中華民族の偉大な復興を実現することこそが、中華民族が近代以来抱き続けて...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。