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「大人のAI」ではなく「子供のAI」に日本は投資すべき

ディープラーニング最前線(4)日本のAI戦略

松尾豊
東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻長 教授
概要・テキスト
人工知能にとってのボトルネックは、「子どものできることほど難しい」ということだった。それを「子どもの人工知能」と呼ぶ東京大学大学院工学系研究科准教授・松尾豊氏は、それがディープラーニングによって可能になった現在こそ、その技術的なブレークスルーの時期だと展望を語る。今後、AIは社会をどう変えていくのか。未来に向けて日本が取るべき戦略、その方向性を、松尾氏に示唆いただいた。(全4話中最終話)
時間:09:08
収録日:2016/04/20
追加日:2016/08/23
≪全文≫

●「大人の人工知能」と「子どもの人工知能」


 以前にもお話ししましたが、僕は人工知能を「大人の人工知能」と「子どもの人工知能」に区別しています。

 これまで、コンピュータにやらせるのは子どものできることほど難しいという時期が何十年も続いてきたのですが、今は変わりつつあります。子どもができるような認識や運動の習熟、言葉の意味理解などができるようになりつつあるということで、こちらを「子どもの人工知能」と呼んでいます。

 一方でビッグデータ全般やIoTに代表されるように、今までデータが取れなかった領域でデータが取れるようになってきました。ここに旧来からある人工知能の技術を使うと、いろいろなことができます。こちらを「大人の人工知能」といっています。

 今の動きの中で、僕が一つ非常に気を付けるべきだと思っているのは、「人工知能」という言葉が独り歩きしていて、いろいろな技術を人工知能と呼んでいる点です。

 大人の人工知能の世界は「データを活用していきましょう」ということなので、これは当たり前のことです。昔からデータの重要性はありましたし、活用した方がもちろん良かったのです。これはもう10年も20年も前からそうです。日本はそこのところの理解がなかなか進んでおらず、むしろ遅れているので、今頃になってようやく「データを活用した方がいい」「情報技術を活用した方がいい」と多くの人が思うようになってきたということです。


●今、日本が賭けるべきは「子どもの人工知能」


 ですから、これは当然やった方がいいのですが、既に10~20年も遅れをとっています。一方で子どもの人工知能、すなわちディープラーニングをベースにする技術は、技術的なブレークスルーの時期に当たり、ここ2~3年で、急激にできるようになってきたのです。これをどのように産業競争力につなげていくか。そこに日本の戦略的なチャンスがあると思います。ですから、この二つは分けて考えた方がいいと、僕は思っています。

 プレイヤーについても、大人の人工知能をやろうとしている人の方が今は多いのです。大手の電機メーカーもそうだし、研究者にも大人の人工知能系、つまり情報(データ)を使おうとか、先端の情報技術を使おうという技術を研究している人が多いのです。ですから、今はこちら(大人の人工知能)の方が声が大きく、国レベルで「人工知能...
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