●格差問題とトランプ大統領誕生、ブレグジットの関係
今、反グローバル化の議論が世界で流れていて、その根底には格差の問題があるといわれています。アメリカでは今回トランプ氏が当選した一つの背景には、いわゆるラストベルト(rust belt)があり、オハイオ州やミシガン州といった政治的にはスイング・ステート(swing state)の人たちの票が、民主党から共和党に流れてトランプ氏に投票したといわれているのです。
先日アメリカに行った時、たまたま人に勧められて読んだ本で『Hillbilly Elegy』(邦題『ヒルビリー・エレジー-アメリカの繁栄から取り残された白人たち』J.D.ヴァンス著、光文社)があります。ヒルビリーというのは、アパラチア山系の麓あたりに広がっている、いわゆるプアホワイト、歴史的にいうとかつてアイルランドやスコットランドから来た非常に貧しい人たちのことをいいます。この人たちがいかに貧しいかということが克明に書かれているのですが、すごい内容です。
実はこの人たちは一時的に豊かになったのですが、それは戦後、特に鉄鋼や自動車産業が盛んになってきて雇用されたからです。それが駄目になって元に戻ってしまいました。麻薬が蔓延し、教育なども受けられなくて生活保護を受けるといった非常に厳しい状況となり、結果的にこの人たちがトランプ氏に投票して政権が動いたといわれています。
イギリスのブレグジット(BREXIT)でも、EUからの離脱に賛成票を投じたのは、ロンドンのような豊かなところではなく、地方が中心だったわけです。そういう中で出てきたのは貧しい人たちで、ポーランドや東欧の人たちがEUのルールの中でどんどん自分たちの近くに来ていろいろな仕事をするために、自分たちの仕事が奪われてしまうのではないかということでした。
●格差の固定化を回避する最大のポイントは教育
そういう意味で、格差は非常に重要な問題です。特に日本では、格差と教育の問題はペアで議論されることがあり、格差があっても頑張れば豊かになれると考えられてきました。例えば、貧しい家に生まれた黒人の少年でも、バスケットのスター選手になれば稼げるといったように、です。これはアメリカンドリームというのかもしれません。
一時的であればいいのですが、教育の問題があるので、貧しい人は教育を受けられない、あるいは教育を受けないということで、自分の...