10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録
10MTVオピニオンは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

ロシアは米大統領選挙でどのような情報工作を行ったのか?

トランプ政権とソーシャルメディア(3)ロシアの情報工作

吉田正紀
元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員
情報・テキスト
元海上自衛隊佐世保地方総監で、一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員を務める吉田正紀氏のワシントンでの活動における同志で、ロシアの若手研究家であるAmerican Security Project エネルギー安全保障プログラム・ジュニアフェローの東秀敏氏が、2016年アメリカ大統領戦に対して、ロシアが行った情報工作について解説する。ロシアはアメリカの言論の自由と民主主義を逆手に取って、サイバー空間上でさまざまな情報戦を繰り広げた。(全3話中第3話)
時間:11:50
収録日:2017/02/24
追加日:2017/08/23
≪全文≫

●ロシアは情報戦を利用して、アメリカを侵略しようとした


 American Security Project エネルギー安全保障プログラム・ジュニアフェローの東秀敏です。ロシアが2016年のアメリカの大統領選挙に対して、どのような情報工作を行ったかを説明します。

 ロシアは情報戦を利用して、アメリカを侵略しようとしました。目的は、米国の民主主義を弱体化させるということ、これに尽きます。その手段は、ジャーナリストを含む、広義の特殊部隊を用いました。広義の特殊部隊と、アメリカ国内における反体制派を利用することによって、ロシアは情報戦を繰り広げました。情報戦の媒体は、サイバー空間だけです。

 ロシアの情報戦略は、4つの段階に分かれていました。第1段階がハッキング、第2段階が暴露、第3段階がネット上での情報工作、そして第4段階が、クレムリンの指示する候補へのサポートです。


●暴露する価値のある情報がハッキングされた


 第1段階目のハッキングですが、米国の民主党本部が主なターゲットとなりました。目的は、暴露する価値がある情報を盗むことです。当時、ヒラリー・クリントン氏はeメール疑惑で物議を醸していました。このタイミングに乗じて、ロシアはネット上で暗躍するNGOに指示を出します。Fancy BearとCozy BearというNGOは、ロシアの諜報機関と連携している組織です。ロシアの諜報機関がこのNGOにダイレクトに指示をして、NGOが代わりにハッキングを行った、という構図になります。面白いことに、ロシアのハッカーは一般市民からリクルートされていました。

 第2段階目は、暴露です。戦略的に暴露を行うことによって、特定の候補に対する一般市民の信頼を弱体化させることが目的でした。やり玉に挙げられたのが、クリントン候補です。ここで活躍したのが、Fancy BearとCozy Bearです。彼らは、WikiLeaksや、今回の大統領選のために特別に作られたDC LeaksやGuccifer 2.0といったサイトを利用して、暴露を行いました。

 暴露のタイミングもかなり戦略的でした。クリントン氏が民主党の候補に支持されたときや、また大統領選1カ月前の10月に、彼女のeメールが大量に暴露されたのです。この結果、選挙の10日ぐらい前に、FBIがクリントン氏を再調査することになり、それが響いて、彼女の支持が没落してしまいます。


●プロパガンダにはソーシャルメディアが用いられた


 第3段階目は、オンライン上の積極工作です。つまり、プロパガンダを通じて、一般市民の現状維持派に対する信頼を弱体化させようとしたのです。主にソーシャルメディアが、その手段として用いられました。過激なコメントを残すトロール部隊や、フェイクニュースが利用されたのです。

 その媒体に選ばれたのは、ロシア国営のメディアです。Russia Today(RT)や、かつての「ロシアの声」であったSputnikが媒体となりました。さらに、国営メディアのみならず、民営のメディアも用いられました。陰謀論者が集まるInfowars、現在ホワイトハウスにいるスティーブ・バノン氏がCEOを務めていたBreitbart、さらに、日本の2ちゃんねるをもじった、4chanという掲示板もあります。これらを通じて、ロシアのプロパガンダが拡散されたのです。

 ロシアが行ったプロパガンダには、ホワイト、グレー、ブラックという、3つの種類があります。ホワイトは発信源が明らかだということ、グレーは発信源が明確でないということ、そして、ブラックは発信源が全く分からない、ということを意味しています。

 ホワイトプロパガンダの例は、ロシアの国営メディアであるRTやSputnikです。RTは一見すると、アメリカのCNNと同じぐらいの質を持っているメディアです。例えば、アンカーの1人には、かつてCNNで腕を慣らしたラリー・キング氏がいます。彼は近年、RTにヘッドハンティングされ、今では看板アンカーになっています。

 グレーは、InfowarsやBreitbartのような、主に民間の親トランプ、親ロシアのメディアです。これはオルタナ右翼を代表するメディアとなっています。最後のブラックは、主にソーシャルメディアで暗躍する、親トランプや親ロ的な発言をするアカウントです。ハッカーが暴露の対象となる情報を得て、それをトロール部隊という過激なコメントを残す人たちに渡します。トロール部隊はこうした情報を使って、炎上を起こします。また、炎上を激化させる、Honeypotsという部隊もいます。彼らは炎上が拡大するような、面白い画像を投入する役割です。

 こうしてホワイト、グレー、ブラックの全てに渡って、同じようなコンテンツがリサイクルされ、それがインターネット上で拡散されました。炎上のサイクルが、どんどんと繰り返されることになったのです。


●ロシアは情報スペースを埋め尽くすという戦略を取った


 情報戦略の最後の段階は、クレムリ...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。