●ドローンにはフィードバック制御が用いられている
ドローンは、ヘリコプターと同じように、不安定な動きをします。一般的に、動的なシステムの特性は、安定・中立・不安定の3つに分けることができます。「安定」は、少しバランスが崩れても、自動的に元の位置に戻ることを意味します。「中立」は、例えば平らな床の上に玉が置かれているように、どこでも止まることができるということです。また「不安定」は、少しバランスが崩れると、もう元には戻らないという意味です。マルチコプターは、こうした不安定な特性を持っています。
つまり、常に操縦・制御しておく必要があるということです。しかし、人間がマルチコプターを制御するには、非常に難しい操縦をしなければなりません。そこで、自動制御であるフィードバック制御が用いられています。具体的にいうと、半導体ジャイロが中に組み込まれており、それが機体の傾きを検出すると、傾きが止まるように、自動的にプロペラの回転数を変えるのです。マルチコプターには、こうした自動操縦・制御のシステムが組み込まれています。
また、GPSを利用すれば、同じようにフィードバック制御で、自動飛行も可能になります。GPSは、地球の周りを回る衛星から電波を捕獲し、自らの位置を予測します。そして、自機の位置とあらかじめ与えた目標位置の差によって機体を傾け、目標位置に向けて自動的に進んでいくように、マルチコプターを制御できるのです。ただし、GPSには通常10メートルほどの誤差があるため、高度を正確に求めるために、気圧高度計や超音波高度計などが利用される場合もあります。
●ドローンの操縦は、基本的にはラジコンと同じ
ドローンの操縦は、基本的にはラジコン、いわゆる遠隔操作の模型飛行機と同じです。コントローラーのスティックを、マニュアルで操作して操縦します。ただし、ドローンにはGPSやコンパスが備えられている場合が多く、こうした機能を利用すれば、空中の一点で、自動的にホバリングさせることもできます。空中からの撮影を行う場合には、こうした機能は欠かせません。
また、カメラの映像を、手元のタブレットやスマホに映し出す機能も備えられています。これは自分があたかもドローンに乗っているかのような、バーチャルリアリティーを作り出します。手元のカメラを見ながら操縦する、ファースト・パーソン・ビュー(第一人称視点)と呼ばれる飛ばし方で、機体を飛ばすことができるのです。さらに、GPSを利用して、あらかじめ飛行地点(ウェイポイント)をコンピューターの中に作成しておけば、その地点を随時目標位置として、自動で経路を飛ばすプログラム飛行(自動飛行)も可能です。
●無人航空機では2種類の無線が使われている
このように、無人航空機では、無線が重要な役割を果たしています。無線には2つの種類があります。1つ目は、機体を制御するための無線で、コントロール・アンド・コマンド(C2LINK)と呼ばれています。この無線は遅延や途切れがなく、常に制御を行う場合に用いられます。2つ目は、画像転送などに用いられる、ペイロードLINKです。この無線は、大量のデータを送る必要があります。
現状では、市販のマルチコプターは、無線LANが利用している2.4ギガヘルツ帯の無線を使っています。無線LANの周波数は、他でも使用されているものであり、注意しなければいけません。
●空中の放射線量計測にドローンを使う実験が行われている
次に、ドローンの利用分野について、簡単に見てみましょう。まず、現在広く使われているのは、空撮です。すでに、テレビや新聞の報道、あるいは映画で、空からの映像を撮る場合には、ドローンが欠かせないものになっています。ヘリコプターやクレーンで行っていた従来の空撮に比べて、低い高度で、ダイナミックな撮影ができるのです。
また、建物やトンネル、橋梁の点検など、高所の作業にドローンを使おうという試みも出てきています。最近では、空から撮影した映像を加工することによって、測量を行うこともできるようになりました。工事現場や作業現場での測量用に、今後、大きな市場が期待できます。
小さな荷物の配送・輸送も、ドローンの重要な利用分野です。現状では、まだ大きなものは運べませんが、小さなパッケージであれば簡単に運べます。特に防災の分野で、薬品などの緊急物資を届けるといったことが期待されていますし、将来的には、配送業での利用も考えられています。
さらに、日本ですでに行われている農薬散布は、空からの物資投下に相当します。空から消火剤をまけば、消防作業にも利用できるでしょう。
空飛ぶドローンを、無線の中継機として使う研究も行われています。東日本大震災の際に、地上の無線局が機能を失い、通信ができなくなりました。空...