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小型無人航空機「ドローン」とは何か?

ドローンが拓く「空の産業革命」(1)無人航空機の歴史

鈴木真二
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
情報・テキスト
近年、小型無人航空機ドローンの開発が進み、空撮や高い場所の点検作業、物流など、様々な分野での利用が期待されている。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、無人航空機の長い歴史をひもとき、現在主流になっているマルチコプターの飛行の仕組みについて解説する。(全6話中第1話)
時間:10:24
収録日:2017/07/10
追加日:2017/08/26
≪全文≫

●ドローンが「空の産業革命」を開く


 東京大学大学院工学系研究科教授の鈴木真二です。今日は「小型無人航空機ドローンが拓く『空の産業革命』」というタイトルで、お話したいと思います。

 小型無人航空機ドローンは、2010年代になり、電動のマルチコプターの利用が急速に広まりました。この機体は自動で飛行することも可能で、空撮の他、高い場所の点検作業、農薬散布、物流への利用が期待されています。これまでの飛行機が飛ぶことのできなかった、非常に低い高度の空域を利用できるドローンは、「空の産業革命」を開くものと期待されています。ただし、安全上の理由で新たな規制も始まり、プライバシーやセキュリティー上の懸念も生じています。

 最初に、ドローンがどのように利用されているか、イメージをつかんでいただくために、実証実験の動画を見てください。私たちは2015年に、AEDを搬送する実験を行いました。心臓発作の際、AEDを用いる必要がありますが、郊外のゴルフ場では、迅速にAEDを届けることができない、という課題があります。そこで、ドローンにAEDを取り付け、ゴルフ場のクラブハウスの前から自動で飛行させました。障害物のない、高度15メートルほどのところへ向けて離陸させ、その後、倒れた人のいる地点に自動でAEDを運びます。あらかじめ目的地の座標をGPSに入力しておけば、そこまで自動で飛行させることができます。着陸も全て自動で行うことが可能です。ゴルフ場のように、障害物が少なく、一般の人もいない広い場所では、ドローンが活躍できるということが確認できたのです。その後、ゴルフ場でゴルフボールやジュースを運ぶといった、新しいビジネスも生まれています。

 次は、物流の実証実験です。2017年2月、国土交通省と東京大学、ブルーイノベーションが共同で実験を行いました。倉庫からドローンが荷物を運んで出ていき、また倉庫に戻ってくるという実験です。こうした物流で使うには、新たな研究開発および制度の整備が必要になりますが、現在でも、技術的には十分可能だと分かりました。


●日本が初めて民間で無人機を業務利用した


 実は、無人航空機は、長い歴史を持っています。1930年代、敵の飛行機を模した標的として、無人機が最初に使われました。ターゲット・ドローンと呼ばれています。アメリカでは第2次世界大戦中に、9,000機ほどターゲット・ドローンが作られました。ドローンを組み立てる作業員として、マリリン・モンローが働いていました。彼女の様子が陸軍の広報誌に載り、それがきっかけで、彼女はハリウッドのモデル・俳優としてデビューした、というエピソードもあります。ターゲット・ドローンは、今でも世界中で使われていますが、民間で無人機を業務利用したのは、日本が世界で初めてのことでした。

 1980年代には、農薬を散布するための、遠隔操作モデルのヘリが開発され、1990年代にはすでに実用化されていました。現在の日本では、空から農薬をまく作業に、こうした遠隔操作の模型のヘリコプターが使われています。

 ドローンという言葉が一般的になったのは、1990年代、偵察機が使われるようになった頃でしょう。1995年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、アメリカの無人偵察機が活躍しました。遠隔操作とはいえ、GPSの信号を利用することによって、機体は自動で飛ぶことができます。さらに、衛星回線を使えば、はるか遠くまで飛ばしたり、撮影した映像を地上局に送ったりすることもできるようになりました。その背景には、GPSや衛星通信の技術の普及があります。

 現在、盛んに利用されているマルチコプターは、2010年に、フランスの会社から模型として発売されたことで急速に普及した。このマルチコプターは、2000年ごろから実用化されたリチウムポリマーと呼ばれる、非常に軽量で、高出力のバッテリーを使うことによって、電動モーターで空を飛びます。最近では、Wi-FiやBluetooth、デジカメといった、IT機器技術を利用した、非常に安価で、使いやすいものが手に入ります。

 ドローンがどのぐらい使われているのか、正確なデータは存在しませんが、アメリカ連邦航空局の2016年の推定によれば、アメリカでは小型無人航空機は110万台存在し、そのうち4万2,000台が産業利用され、ドローン操縦士の数は2万人にも上ります。5年後には、全体の台数は3倍、産業利用の機体は10倍、そしてドローン操縦士は10~20倍に増えると、予測されています。


●プロペラの回転数の変化で、3次元空間を自由に飛行する


 次に、マルチコプターがどのように飛行するのか、簡単に説明します。マルチコプターは、飛行機やヘリコプターといったこれまでの航空技術ではなく、複数のプロペラの回転数を変更させるだけで飛行できるという、非常に単純な機構を持っています。通常、4つ以上のプロペ...
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