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日本の安全保障と経済の関係

インテリジェンス・ヒストリー(8)日本経済と安全保障

中西輝政
歴史学者/国際政治学者/京都大学名誉教授
情報・テキスト
歴史学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏が、日本経済と安全保障の関係について解説する。日本の現在の立場は、自由貿易帝国主義時代の植民地と似ている。他国に利益を上げさせて、自国の安全を守っているのだ。これが日本の「意図せざる安全保障戦略」だった。(全11話中第8話)
時間:04:24
収録日:2017/11/14
追加日:2018/06/20
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≪全文≫

●日本は欧米の植民地と似たような状況にある


質問 日本は他国から人畜無害だと思われているから、徹底的にやられることはないというお話でした。

中西 それはあると思います。米軍も基地は維持しないといけないし、日本との政治的な同盟関係は大切です。米中で話がまとまれば、日本がどう動いても平和です。日本から何か仕掛けてくるようなことはないのですから。

質問 トヨタやソニーなど利益を上げている企業は、外人投資家の比率が高くなっています。これも日本の安全保障に良い影響を与えているでしょうか。

中西 そうですね。日本は欧米が18世紀まで持っていた植民地と似たような状況です。植民地を領土にする必要もないし、相手は別の政治主体です。要するに、富だけ得られればそれで良かったのです。

 例えば典型的には、オランダはインドネシアを長い間支配していましたが、植民地にしたのは19世紀の後半になってからのことでした。放っておくと他国が入ってくるので、オランダ領土だとして、法律上正式な植民地にしたのです。およそ1870、80年代から始まる、いわゆる帝国主義の時代はそういう時代でした。

 それまで植民地については、自分の国の縄張りだと公式に主張することはありませんでした。利益だけ上げられればいいわけです。コショウやコーヒー豆、綿、アヘン、何でもいいからとにかく商売ができれば良かったのです。これが東インド会社の哲学です。


●日本の意図せざる安全保障戦略とは何か


中西 これが自由貿易帝国主義、フリー・トレード・インペリアリズムの時代でした。今の日本はそういう意味で、あの時代の植民地の立場だと考えておけばいいでしょう。そうすると非常に分かりやすくなります。つまり、利益を常に提供しておかないとうまみがありません。相手に考え方を変えられると、安全保障にまで響きます。

 だから、常に利益を上げて、配当し、管理をさせることが大切です。世界システムの一部として、現状に満足している国家として変なことを言わなければ、とりたててつぶす理由もありません。それが日本の安全保障戦略だったのでしょう。たくまざる、意図せざる戦略です。

 いずれにせよ中国から見て、日本の外務省は別次元なのでしょう。日本の外務省にしてみると、対中外交は、中国外交部との関係を意味します。それより上のレベルはブラックボックスになってしまっていて、全くどうなっているのか分かりません。しかし、これでいいわけです。
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