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柔軟で新しい議論の方法「アンカンファレンス」

創造的な場を支える仕組みを研究する(4)新たな会議形式

江渡浩一郎
産業技術総合研究所 主任研究員
概要・テキスト
ニコニコ学会βは2016年に解散されたが、サマーキャンプはなお継続している。そこでは、「アンカンファレンス」という新たな議論の形式が採用されている。メディアアーティストで国立研究開発法人産業技術総合研究所知能システム研究部門主任研究員の江渡浩一郎氏がその具体的内容を紹介する。(全10話中第4話)
≪全文≫

●「ニコニコ学会β交流協会」を立ち上げ、サマーキャンプを継続


 ここで紹介したいのがサマーキャンプです。ニコニコ学会βでは2011年から2016年まで5年間活動してきました。大規模なシンポジウムという形で表に出る活動をし続けてきたのがこの5年間ということです。その後、2016年に組織を解散したのですが、「交流の場だけは残してほしい」という声があり、「ニコニコ学会β交流協会」という場を立ち上げました。そこで培った人のつながりを維持するため、毎年サマーキャンプだけは実施するようにしています。

 サマーキャンプは2012年から毎年続けて行っているのですが、場所は主につくばです。100人弱の人が集まり、科学の未来について自分が思っていることなど、さまざまなことを発表する場になっています。


●新しい議論方法、アンカンファレンス


 そこでは、「アンカンファレンス」という方式を使って議論の場を作っていますが、これがなかなか工夫されています。皆さんに知っていただきたいので、ここで細かく説明したいと思います。

 まず、アンカンファレンスについて簡単に説明します。あらかじめタイムテーブルを決めないで、空白の状態のタイムテーブルを作っておく。当日の朝、集まった時点で、参加者の発案によりそのタイムテーブルを埋め、その後、そのタイムテーブルに従って議論する。こうした方法だと要約することができます。

 こうすることによって、さまざまな人のアイデアが集まった形でタイムテーブルが出来上がるので、自分たちがどのようなことを議論したいかがそのタイムテーブルに反映されやすいのです。そうすることで、自分の興味に従ったタイムテーブルができるので、とても議論に参加しやすいし、モチベーションの高い議論ができます。そのことによって、おのおののセッションはとても時間は短いのですが、とても濃密な議論を行うことができ、高速に話が弾んでいくという場ができるのです。

 実際にその方法論として、具体的にどのように方法で進めているかを説明します。

 アンカンファレンスを説明するときによく比喩として出す話があります。例えば、シンポジウムやカンファレンスで集まって誰かと話をしていたとき、その話がとても...
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