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皮膚医療を変える皮膚常在菌の可能性と個別化医療の将来

最強の臓器「皮膚」のふしぎと最新医療(3)未来の皮膚医療

椛島健治
京都大学大学院 医学研究科 皮膚科学 教授
概要・テキスト
『人体最強の臓器 皮膚のふしぎ 最新科学でわかった万能性』(椛島健治著、ブルーバックス)
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未来の皮膚医療のカギになるものの一つに「皮膚常在菌」がある。腸の健康を左右する腸内細菌同様、善玉菌と悪玉菌のバランスにより、皮膚のみならず全身の健康増進が期待できそうだ。最後に、症状に応じたきめ細かな個別化医療の可能性、臨床の知恵に基づいた創薬など、今後の医療をより明るいものとしていく話を伺った。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:30
収録日:2023/05/30
追加日:2023/08/26
≪全文≫

●皮膚常在菌――善玉菌と悪玉菌のバランスが重要


―― それではもう一つ、未来の皮膚医療ということについてもお話をお聞きしたいと思います。こちらの『皮膚のふしぎ』の本でやはり非常に印象深かったのが、「皮膚常在菌」というのでしょうか、皮膚に常にいる菌があるというお話です。

 腸内細菌などというものは聞くことが多いのですが、皮膚にも常に細菌というものがあって、いろいろな働きをしている。そこに注目することで、治療の方向もいろいろあるのではないかということを先生がお書きになっていました。ここを簡単に教えていただくと、どういうことになりますでしょうか。

椛島 たぶん、この番組(テンミニッツTV)を見られている方も腸内細菌という言葉はよく聞かれているかと思います。具体的には、例えば潰瘍性大腸炎という病気の方に、健康な方の便に存在している腸内細菌を口から入れれば、その潰瘍性大腸炎がよくなる(ことがある)。(もちろん)全員ではないのですが、そういう方がおられるというような報告がなされてきたことから、腸の中にいる菌が健康あるいは病気に関わっているということが分かってきました。

 それと同様、皮膚にもいろいろな菌がついています。これは、不潔だから、あるいは清潔にしているからということではなく、多様な菌、細菌や真菌、ウイルスなどいろいろなものがついていて、互いに共存し合って、われわれの健康な皮膚を維持しているのです。ですから、菌がまったくない状態というのは、実はあまり皮膚にとってはよろしいわけではないのです。

 そういう中で、例えばアトピー性皮膚炎になると、黄色ブドウ球菌という「悪玉菌」といわれる菌が増えることが分かっています。一方、表皮ブドウ球菌という菌をはじめとする「善玉菌」というものがあり、そういう菌が多い場合には、皮膚のバリアや炎症を抑えてくれる。だから、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れるとアトピー性皮膚炎が増悪するというようなことが分かってきています。

 そういうところに注目して、日本でもそういう領域を研究されている先生方がおられますし、海外のほうでも臨床研究が進んでいます。アトピー性皮膚炎の患者さんに善玉菌を植え付けると、菌のバ...
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