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「自民党一強」ではなく「安倍一強」へ 総選挙の思惑とは?

待ったなしの経済動向と安倍首相の総選挙断行

島田晴雄
慶應義塾大学 名誉教授
情報・テキスト
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/meibo/daijin/abe_shinzo.html)より
日本の経済動向は決して楽観できる状態ではない。円安でも輸出が伸びず、その他さまざまな要因のため、経済成長に点火しない状況なのだ。消費税引き上げを延期し、急きょ総選挙に踏み切った安倍首相の本音はいかなるものか。物価上昇率、成長率などの数字に垣間見える黒田総裁、安倍首相の思惑を島田晴雄氏が解説する。(2015年1月26日開催島田塾第120回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済」より、全10話中第7話目)
時間:11:29
収録日:2015/01/27
追加日:2015/03/02
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/meibo/daijin/abe_shinzo.html)より
日本の経済動向は決して楽観できる状態ではない。円安でも輸出が伸びず、その他さまざまな要因のため、経済成長に点火しない状況なのだ。消費税引き上げを延期し、急きょ総選挙に踏み切った安倍首相の本音はいかなるものか。物価上昇率、成長率などの数字に垣間見える黒田総裁、安倍首相の思惑を島田晴雄氏が解説する。(2015年1月26日開催島田塾第120回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済」より、全10話中第7話目)
時間:11:29
収録日:2015/01/27
追加日:2015/03/02
≪全文≫

●物価に比べ、なかなか上がらない実質賃金

 
 さて、経済動向はどうなっているかですが、これは物価と賃金の関係なのです。物価は、さすがに上がり始めました。特に、あれだけ円安になっているので、輸入物価は上がりますからね。ところが、賃金が上がらないのです。どういうことが起きているのかというと、一昨年の2013年の夏からずっと実質賃金は下がっています。

 例えば、こういうことが起きているのです。2013年7‐9月は、物価は0.9、その次の10‐12月は1.4、次の2014年1‐3月は1.5パーセント上がりました。賃金はどうかというと、名目賃金は同じ期間の2013年7‐9月にマイナス0.4パーセント下がっています。次の期も上がってもほんのわずかだったりしています。ですから、実質賃金は下がっていると言えます。また、消費税が上がってから物価は、去年の2014年4‐6月で3.6パーセント、7‐9月が3.3パーセントになりましたけど、名目賃金の方は4‐6月が0.8、7‐9月は1.5パーセントですから、もうぶざまと言っていいほどに下がっているのです。

 よくこれで日本の国民はおとなしくついていっているなと思いますね。これがギリシャだったら、大変な話になると思います。ですから、「アベノミクスの信任を問う」といって選挙を決断した安倍さんは度胸があるな、と思います。そういう状態が今、続いているのです。


●円安でも輸出が伸びない三つの理由

 
 円安になったのだから、輸出が伸びるだろうと期待されたのですが、ほとんど伸びていないのですね。これから伸びるのか? とも言われていますが。

 輸出が伸びないのはどうしてなのだろうというと、一つは運が悪いのです。ちょうどアベノミクスが出た頃から、世界が非常に不況に入り始めたのです。特に、アメリカがテーパリング(量的金融緩和の縮小)を始めてしまったので、新興国の通貨が下落し、経済がもう軒並み低迷してしまいました。さらに、尖閣問題があって、なんと中国との取引が3割以上減ってしまったのです。ですから、もう輸出しようにも伸びないのです。

 それから、もう一つ、輸出の伸びない理由としてあるのは、日本の主要企業の価格政策が変わったからです。以前は、物価が下がると、日本企業はアメリカやヨーロッパでの製品の値段を下げたのです。今はほとんど下げていません。どうしてかというと、量など少しくらい減っても、価格を維持して、ブランドがあるのでその力で売れれば、実はその方がもうかるのです。ですから輸出量は増えていないという状況があります。

 また、もう一つは、日本の企業が海外展開をここのところ非常に積極的にしているわけです。キッコーマンなど、利益の7割は海外からですから。

 こういうことなので、構造的な問題と世界のマクロ経済の変動が全部合わさって、日本の輸出は伸びないのでしょう。徐々に円安の効果が出ると言われてはいますが、大したことはないです。


●点火しない経済成長


 いずれにしても、このような状況ですから経済成長が点火しないのです。2013年の1‐3月は成長率6.0パーセントで、これはすごい高度成長だと思われた。4‐6月は3.0、7‐9月は1.6、そして、10‐12月がマイナス1.5パーセントです。

 去年の2014年は、消費税アップ前の駆け込み需要があって、年率にすると、1‐3月が5.8パーセントに上がったのですが、次の期4‐6月は、なんとマイナス6.7パーセ...
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