編集長が語る!講義の見どころ
「自分をコントロールする力」の仕組みに迫る【テンミニッツTV】
2021/04/20
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
「自分をコントロールする」。これは人間にとって不可欠の要素です。もちろん、自分自身の日々の生活においても「自分をコントロールする」ことは大切ですし、お子さんやお孫さんがいらっしゃる方にとっては、そのような能力をいかに身につけさせるかも興味深いところではないでしょうか。
本日ご紹介する森口佑介先生(京都大学大学院文学研究科准教授)によれば、200人の男女を対象にした実験の結果、人間は起きている時間の約4分の1、およそ4時間も何らかの欲求を感じつつ、それを我慢して抑えていることが明らかになったとのこと。欲求というのは、食欲や睡眠欲からSNSを使いたいという欲求まで多岐にわたるそうですが、あらためてそう聞くと、いろいろと思い当たる節がある方も多いのではないでしょうか。
では、そのような欲求をコントロールする力とは、どのようなものなのか。また、それはどのように形成され、どのように鍛えられるものなのか。本日はそれに迫っていきましょう。
◆森口佑介:「自分をコントロールする力」の仕組み(全6話)
(1)自制心と目標の達成
教育現場で注目を集める「自分をコントロールする力」とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3907&referer=push_mm_rcm1
森口先生は、「自制心は、われわれ人間に非常に特殊に備わっているもの」とおっしゃいます。人間に近い生物とされるチンパンジーや、あるいは犬などの生物でも、やはり人間と比べると、自分をコントロールする力は劣ります。
この「自分をコントロールする力」は、専門的には「実行機能(executive function)」といいます。「実行機能」には大きく分けて「感情面の実行機能」と「思考面の実行機能の」2つがあります。
「感情面の実行機能」は、食欲や睡眠欲などといった衝動的な感情や欲求を抑えてコントロールする力。もう一方の「思考面の実行機能」は、習慣や癖をコントロールする力、より具体的には、「集中力」や「頭を切り替える力」などを指します。
「実行機能」を左右するのは、脳の表面の「大脳皮質」や、脳の奥にある「大脳辺縁系」と呼ばれる領域です。とりわけ「外側前頭前野」と呼ばれる領域は、欲求をコントロールするために非常に重要な役割を果たしているといいます。この外側前頭前野は、例えばチンパンジーや犬と比較しても、人間において特に成長・発達している部分です。
当然、人間の「自分をコントロールする力」も、脳の発達に大きく左右されます。具体的に、「自分をコントロールする力」が年代によってどのように育っていくのかは、本講義の第3話、第4話で森口先生が詳しく解説してくださっていますので、ぜひご覧ください。自分の子供の頃を振り返っても、また身近な子供たちのことを考えても、とても興味深いご分析です。
では、「自分をコントロールする力=実行機能」はどうすれば高めることができるのでしょうか。森口先生が指摘されるのは、「規則正しい生活習慣」です。
まずは睡眠。特に夜間に寝る時間の長さが重要とのこと。なぜなら、夜に寝ている間に脳の修復が行われ、成長するからです。決まった早めの時間に寝て、朝きちんと起きるという習慣をつけて、たっぷりと夜間に睡眠を取ることがまず重要だといいます。
2つ目は、メディアとのつきあい方です。適切な範囲でテレビの番組を見ることは、全く問題ないけれども、誰も見ていないのにテレビがついている状態など、漫然とテレビをつけているような状態が、実行機能の発達に悪影響であると実証されているといいます。
次に重要なのは、親子関係です。虐待やネグレクト(育児放棄)は脳の発達にも実行機能の発達にも大きな悪影響を与えます。
さらに森口先生は、幼稚園や保育園、モンテッソーリ教育、瞑想、音楽の効果についてもご解説くださいます。実際に、どのようにすれば効果が高まるのかは、とても興味深いお話です。
最近では、「自分をコントロールする力=実行機能」が「IQ(知能指数)」よりも注目されていると、森口先生はおっしゃいます。IQは、子供の頃に高ければ大人になっても概ね高い水準が維持されます。しかし、「実行機能」は「IQ」とは異なり、子供のときに高いからといって、その後も高いとは限らず、逆に、良い訓練や教育を受ければ、高くなる可能性があると実証されているそうです。まさに、自分で鍛え、コントロールできる力だといえるでしょう。
ぜひ本講義で「自分をコントロールする力」の科学的解明に触れていただければ幸いです。
(※アドレス再掲)
◆森口佑介:「自分をコントロールする力」の仕組み(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3907&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「何で失敗した?」ではなく「何を学んだの?」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3853&referer=push_mm_hitokoto
失敗を生かせる人、生かせない人の違いとは何か
為末大(一般社団法人アスリートソサエティ代表理事/元陸上選手)
「何で失敗した?」ではなく「何を学んだの?」というのがそのコーチの口癖で、私も刷り込まれたのです。その2つはとても近いことなのですが、「こういうのが失敗になりました。だから次は…」とか、「だからこうなって、というのが分かりました」となるだけで失敗の捉え方が変わるのです。それを自分の頭の中で勝手に翻訳できるかどうかが、失敗が生かせるかどうかの大きなポイントのような気がします。
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編集後記
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編集部の加藤です。皆さん、今回のメルマガ、いかがだったでしょうか。
ところで、先週金曜日(4/16)のメルマガでも紹介しましたが、同日に<春に「人間力」を高める>特集が始まりました。
◆<春に「人間力」を高める>特集
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=110&referer=push_mm_edt
おかげさまで多くの方々にご視聴いただいております。皆さまの人間力アップに少しでもお役に立てたのであれば幸いでございます。
なかでも「今週のひと言メッセージ」で取り上げました為末先生の講義はアスリートだけでなく、一般の方にとっても非常に学びとなる内容だと思います。まだ聴いていないという方はこの機会にぜひご視聴ください。
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