編集長が語る!講義の見どころ
なぜ日本の医療はグローバル化が遅れているのか(テンミニッツTV)

2020/03/18

皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

いま、新型コロナウイルスの問題もあり、医療現場に注目が集まっています。目下、危機対応が喫緊の課題になっているわけですが、しかし、平時における「日本の医療問題の本質」も考えておくことが重要ではないでしょうか。逆にいえば、そのような目をもって医療現場を見ていくと、危機管理の場における工夫の余地なども見えてくるはずだからです。

そこで本日は、堀江重郎先生(順天堂大学医学部教授)が世界と日本の医療について比較して語ってくださった講義をご紹介いたします。

◆堀江重郎:世界と日本の医療(全6話)
(1)グローバル化が遅れる日本の医療
なぜ日本の医療はグローバル化が遅れているのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2952&referer=push_mm_rcm1

堀江先生のご専門は泌尿器一般、泌尿器外科手術ですが、ロボット支援手術(前立腺)、腹腔鏡手術(腎臓、副腎、前立腺)、前立腺がん手術など幅広い分野でご活躍のほか、アンチエイジングに取り組む日本抗加齢医学会で理事長を務められ、またアメリカの医療にも詳しく、かつ医療費と財政の問題にも造詣が深くていらっしゃいます。

堀江先生は、前立腺がんの手術に「ダヴィンチ」という内視鏡手術支援ロボットを使っておられます。このロボットは、もともとアメリカの国防総省が戦場で傷ついた兵隊を医者が遠隔治療できるように開発されたもので汎用性も高く、今後のさらなる応用が期待されます。

しかし、このダヴィンチ、実はアメリカ、ヨーロッパ、タイ、韓国などでの価格(ほぼ同じ値段)と比べて日本だけが、ずばぬけて高いといいます。なぜ日本だけが高いのか。堀江先生が指摘されるのは、日本の場合は医療器具を日本で使う場合にはすべてのドキュメントを日本語にしなければいけないのに対し、他国では英語のままで使っていることです。つまり、日本の場合、システム全体を翻訳する費用がかかってしまっているのです。加えて、ディストリビューター(販売代理店)の利益の上乗せなども加味されてきます。

また、アメリカと日本では、ダヴィンチを使う発想そのものが違うのだといいます。アメリカでは、ダヴィンチを使うことで、たとえば医者が3人必要だったケースでも1人で対応できるようになること、遠隔医療が可能になること、医療過誤が起きにくくなることなど、システム的に考えます。それに対し、日本では単に「医療器具」とみなしているというのです。

前者の理由は、いわば日本のグローバル化の遅れともいえるかもしれません。後者は、日米のシステム的な思考力の差といえるでしょうか。

中国では、今般のウイルス禍で遠隔医療を強力に推し進めたともいわれますが、日本もこの機に、遠隔医療の仕組みを大いに進めるべきではないでしょうか。

このほかにも、堀江先生はこのシリーズ講義で、「アンチエイジングは自立をするための医学・健康学」「優秀な人だけで画一的なチームを組むことの問題点」「能率追求のなかに、見落としのリスクが潜んでいること」など、医療以外でも大きなヒントになるようなご提言を数々されています。

ということで、多くの示唆を与えてくれる講義です。ぜひご覧ください。

(※アドレス再掲)
◆堀江重郎:世界と日本の医療(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2952&referer=push_mm_rcm2


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レッツトライ! 10秒クイズ
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世界史(古代ローマ史)のクイズです。
「人類史の中で最も至福の時代」と、イギリスの歴史家エドワード・ギボンが『ローマ帝国衰亡史』で評したのは何時代?
答えは下の講義をご覧ください!
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2225&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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編集部の加藤です。
先週末、東京では雪が降りました。それまでの数日間暖かい日が続き、桜の開花も間近というなかでの降雪でしたので少し驚きましたが、周りの家々の屋根に降り積もる雪を見て「雪は天から送られた手紙である」という中谷宇吉郎氏の言葉を思い出しました。
北海道大学教授だった中谷氏は有名な雪の研究者でした。この言葉は雪の結晶のことを表したものですが、雪の結晶に魅了された彼は、のちに世界で初めて雪の結晶を人工的につくることに成功したそうです。彼はどんな思いでこの言葉を残したのでしょうか。
テンミニッツTVでは、雪の結晶に関して「雪氷防災の今とこれから」シリーズの1話目で取り上げています。雪にもいろいろあり、それを知ることは雪氷防災にとっていかに役に立つことかが分かります。まだ観ていないという方はこの機会にぜひご視聴ください。

<雪の結晶に関しての講義はこちら>
雪氷防災の今とこれから(1)雪の性質と降り方
上石勲(防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター センター長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2685&referer=push_mm_edt