AIによる雇用への影響を考える上で世界の潮流となっているのが「タスクベース・アプローチ」である。これは2024年ノーベル経済学賞を受賞したダロン・アセモグル教授が提唱する考え方で、仕事を「最小単位のタスク」に分解して捉える手法だ。アセモグル教授は、現在のAIを人間が行ってきた作業を単に代替しているだけの「まあまあの技術(ソーソーテクノロジー)」であると指摘し、既存の仕事を奪うだけに留まる現状に懸念を示している。いったいどういうことなのか。AIの進化によって生まれる2つの可能性とともに解説する。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●ダロン・アセモグル教授が提唱する「タスクベース・アプローチ」
―― 続きまして、「タスクベース・アプローチ」というところになりますけれども。
宮本 AIやロボットといった新技術が雇用に影響をどのように及ぼすのかを考える際に、「タスクベース・アプローチで考えましょう」というのが今、世界の潮流になっています。
これは、マサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授らが提唱されている考え方です。アセモグル教授は2024年にノーベル経済学賞を受賞されました。ここでいうタスクとは「仕事の最小単位」のことです。
例えば、私の職業は大学教授、あるいは大学教員ですが、この仕事の中にもいろいろな「タスク」があります。
―― 例えば、「学生さんを教える」とか。
宮本 そうです。例えば「研究をする」のもタスクですし、今おっしゃったように「学生の指導をする」のもタスクになります。ではその「学生の指導をする」というタスクを考えたとき、授業をやりますよね。そうすると、授業をやる前に授業の準備をします。そして、実際に授業をやります。学生さんからの質問に答えます。試験問題を作って、試験を実施して、採点して、成績をつける。これは全部タスクなのです。
―― それぞれが、もう…。
宮本 それぞれがタスクなのです。
―― 「学生指導」ではなくて。
宮本 そのように細かい最小単位に分けて考えるわけです。
―― なるほど、そこまで切るということですね。
宮本 はい。そうすると、AIが代替できるところと代替できない部分がみえてきます。例えば、AIは「スライドを作る」といったタスクを行うことが可能です。(AIに)試験問題を作らせていいかどうかはちょっと分かりませんけれど。
―― そうですね。
宮本 「作れ」と指示すれば、作ってくれると思います。成績をつけるとか、そういったものを整理するとか、AIが得意とする作業は代替できるわけです。
ただ、オフィスアワー(学生が質問や相談のために、大学教員の研究室を訪ねることができる時間)を代わってもらえるのか、個別指導ができるのかというと、AIがまだ得意ではない分野もあるわけです。つまり、AIには得意な分野もあれば、得意じゃない分野もある。得意な分野は当然代替が進んでいくだろうし、AIが苦手なところは人間がまだまだ...