AIによる仕事の代替は、第一次産業革命の「ラッダイト運動」から続く「古くて新しい問題」である。経済理論では、新技術が失業を招く「創造的破壊」と、生産性向上により雇用を生む「資本化効果」の双方が示されてきた。近年の日米の研究では、雇用の40パーセント以上が代替される可能性が示唆され、再び議論が過熱した。では本当に技術進歩によって失業は増えるのか。雇用の未来について、日本が抱える「労働市場の流動性」という課題とともに議論する。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●「技術的失業」――昔から議論されてきた「古くて新しい問題」
―― では続けて、働き方の部分、技術がどう変えていくかというところをお聞きしたいと思います。
最初が「古くて新しい問題」というところですが、これはどういう問題になりますか。
宮本 今回AIが出てきて、「AIによって仕事が奪われてしまうのではないか」といった懸念がいろんなところで聞かれるようになっています。ただ、この話は決して目新しいものではありません。歴史を遡ると、第一次産業革命の時代まで遡ることができるのです。
新しい技術が出てくるたびに、それによって人々の仕事が奪われるのかどうかは、常に議論されてきました。歴史や社会の教科書にも「ラッダイト運動」という言葉が出てきます。第一次産業革命の時に機械化に反対した労働者が機械を打ち壊した運動ですが、この問題はその時にまで遡るのです。
経済学では、1930年代に「マクロ経済学の父」と呼ばれるジョン・メイナード・ケインズが「技術的失業」というコンセプトを提唱しています。これは、新しい技術が出てきたときに一時的に労働者が仕事を失う可能性があるという考え方です。このテーマは、その頃からずっと議論され続けているのです。
1960年代~1970年代になると、いわゆるオートメーションの時代に入り、さまざまなものが自動化されていきました。分かりやすい例でいえば、銀行のATMや空港のチェックインカウンターなどです。対面の窓口サービスが機械に置き換わっていく中で、オートメーションによって、人々の仕事がなくなるのではないか、という議論が起こりました。
ところが、実際にはどうだったのか。例えば、ATMが普及すると、窓口で現金を預ける、あるいは引き出すという業務は、ATMが担うようになりましたが、それで銀行員の仕事がなくなったかというと、必ずしもそうではありませんでした。例えば、顧客に対する資産運用のアドバイスなど、別の仕事が生み出され、結果として雇用が一方的に失われたわけではなかったのです。
●創造的破壊と資本化効果――技術進歩が雇用に与える2つの影響
―― それについて、先ほどもケインズの名前が挙がりましたが、経済理論はどう見ているのかというところですね。
宮本 経済理論では、技術進...