中国史の三大要素は「皇帝」「都市」「漢字」だと岡田英弘先生は語った。実は中国の歴代王朝は、領域内の農村からの租税によって立脚していたのではなく、「都市のネットワーク」だった。そして、その頂点に立つ皇帝の正体は、実は「総合商社の社長」であり、「最大の資本家」であった。さらに、文字の形を見れば意味がわかる「漢字」は、話し言葉の違う人たちのコミュニケーションツールであった。つまり、話し言葉が通じない相手であっても、文字によって交流・交易するものだったのだ。「皇帝」「都市」「漢字」というキーワードから、日本人が思い描きがちな中国像とはまったく異なった「中国像」が浮かび上がってくる。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●「皇帝」「都市」「漢字」が三大要素…皇帝は商業を握る存在
―― このご本では、本当にいくつもキーワードが出てくるのですけれど、一つ、ここで紹介したいのが「皇帝」と「都市」――都市というのは「街の都市」のことですが――、その問題というのをぜひ、取り上げたいと思います。ちょうどこちらの新しい本(岡田英弘著『皇帝たちの中国』新版)の「はじめに」の部分でも、岡田(英弘)先生が重視されてきた三大要素として「皇帝」「都市」「漢字」を挙げていらっしゃいます。
宮脇 はい。
―― それでまた、別の「時代的なもの」で言いますと、「漢族」ですね、漢の民族である漢族の時代と、「北族」、これは北の遊牧民族の時代。それから新しい遊牧民族の「新北族」の時代という三区分を挙げられて、そういうものがすべて中国史の要素としてあるというお話をされているのですけれども。
特に、おそらく日本人にとって興味深いのが、「皇帝」というものについての、われわれの感じ方がまったく違うということと、それから中国という「国の形」と言いますか、それがまたわれわれが思っているものとは実はまったく違うのですよというご提起をされていてですね。
宮脇 はい。ですからやっぱり、元々は(岡田英弘氏は)理系の人なので、「切り取り方」が素晴らしいのです。
『皇帝たちの中国』ともう、二つの名前がタイトルに出ているわけですよね。だから、何が「中国の歴史」かといえば、「皇帝」と「街=都市」と「漢字」であると。で、この三つがどんなに時代が変わっても、担う人間が「漢族」から「北族」から「新北族」に変わっても、この三つの要素があるから「中国史」でしょうと。
そんなことを言ったら現在だって皇帝のような人がいるわけですから、けっこう、その伝統が残っているので、それを切り口にして分析しましょうという言い方ですよね。
―― そうですよね。日本人ですと、どうしても江戸時代などの武士の時代の伝統があるので、領主様というのはだいたい、田んぼに依拠するといいますか、田畑に依拠していて、税金も江戸時代はお米であったりという感覚があるのですけれども、その感覚で中国を見ると、まったく当然ながら違いますよということですね。
宮脇 何がやっぱり一番すごかったかと言うと、皇帝のそもそもの元が「街の偉い人」で、中国史というのは、「都市」と「道=ルート」...