中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む
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特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
宮脇淳子(公益財団法人東洋文庫研究員)
われわれ日本人が、現代中国の諸問題を読み誤ってしまうのも、中国歴代の正史が都合よく隠し続けたものを理解していないからではないだろうか。岡田英弘先生の『皇帝たちの中国』は、前漢の武帝から清の康熙帝まで、5人の皇帝をピックアップするが、それぞれの概略を見ていくだけでも、多くの気づきに出合う。唐の太宗・李世民の時点で、すでに漢人から入れ替わっていること。フビライ・ハーンの元朝が中華帝国のように見えるのは、あくまで正史のうえだけで、実態はまったく違うということ。明の洪武帝は宗教秘密結社がわからないと理解できないこと。そして清朝の版図のうち、漢字を使っていたのは5分の1に過ぎなかったこと……。そのようなことを踏まえていくと、現代中国の姿もおのずと浮かび上がってくるのである。(全4話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:6分41秒
収録日:2019年7月23日
追加日:2026年7月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●元朝は中華帝国ではない…皇帝はずっと都にいたわけではない


宮脇 最後に、5つの皇帝。

―― 今度は、(岡田英弘著『皇帝たちの中国』で取り上げた)5つが誰かというところですね。

宮脇 はい、そうです。

―― まず第1は、前漢の武帝ですね。そして第2が、唐の太宗・李世民。

宮脇 うん、ですからここで、もう人間が入れ替わっているわけですよね。三国志を経ているからね。北から入った人たち。

―― 先ほどの6000万人から400万人台に減った後の。

宮脇 だから世界帝国なのです。もう自分たちが、すごい外をね、草原を行き来していた人が入ってきて皇帝になるから、当然、世界帝国になると。

―― そうですね、確かに。で、そのあともまた変わってきて、元の世祖・フビライ・ハーン。

宮脇 そう、これチンギス・ハーンの孫なのですけれど、この人がシナで「元」を建てて。でも「元朝=モンゴル帝国」ではないということを言わなければいけません。そんなことをしたらロシアまで元朝だということになって、すごい嘘なのね。

―― そうですね、はい。

宮脇 ですから元朝は、モンゴル帝国の中の4分の1くらいのところが元朝になるわけです。それで孫の時代、フビライの時代になるともう、ほかの残りのいとこたちは中央アジアとかロシアで違う国を建てる。

 そして元朝も、中国的な王朝ではありません。いかにも司馬遷『史記』的な中に入っていると元朝は中華王朝だというふうに見えるけれども、いやいや、そうではない要素を書かなかったのです。元朝の中には書いてないことばっかりあって。

―― 面白いですよね。

宮脇 北の話とか中央アジアの話とか出てこない。

―― 面白かったのは、だいたい元の皇帝も、大都(いまの北京)にずっといたわけではなく。

宮脇 冬の3カ月しかいない。

―― だから、避暑の反対で……。

宮脇 避寒(ひかん)です。ですから、あの、冬営地(とうえいち)と夏営地(かえいち)って言うのですが、夏と冬は2つの都を行ったり来たりするわけですよ。

―― もう完全に植民地扱いですね。

宮脇 それで、第4が、明の太祖・洪武帝(こうぶてい)で、これがやっと、また漢族に戻ったって言われている南の人の出身で。

―― ここで、やっぱり面白かったのは、中国の秘密結社、宗教秘密結社の伝統です。岡田(英弘)先生の言葉で言いますと、皇帝の歴史...

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