織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
安土と鞆の二重政権がしのぎを削った7年間
第2話へ進む
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
歴史と社会
藤田達生(三重大学教育学部教授)
新しい史料の発見、歴史研究の刷新等によって、従来、盛んに唱えられていた「信長=天才的イノベーター」「光秀=私怨による謀反人」という見方が払拭されつつある。光秀を悲劇に巻き込んでいったともいえる「織田信長と足利義昭」の関係にスポットを当てた連続講義で、一足先に戦国の英雄たちに触れてみてほしい。(全8話中第1話)
時間:13分40秒
収録日:2018年10月29日
追加日:2019年2月1日
≪全文≫

●勅命講和後の織田政権、天下人への最終段階


 皆さん、こんにちは。三重大学の藤田と申します。本日は、「織田信長と足利義昭」というテーマでお話をさせていただきます。

 天正八(1580)年三月、正親町(おおぎまち)天皇は信長の依頼を受け、大坂本願寺と信長の講和を仲介します(「勅命講和」)。これにより、一向一揆を先導していた大坂本願寺と長らく戦っていた信長が和解することになりました。実態としては、信長が天皇をある種利用しながらということになりますが、本願寺を紀州(現在の和歌山)に退去させることに成功しています。

 その瞬間から、信長は新しい政治改革を大変な勢いで進めていくことになります。信長の天下統一は、この瞬間から新しいステージを迎えたといっていいと思います。それまでは、境界を接する敵対大名領主と直接戦っていましたが、これ以降は遠隔地の大名領主との和平交渉に向かい、場合によっては戦争も行いつつ、新しい天下統一の段階を迎えます。

 具体的には、この年から他国への介入が始まり、停戦令を押し付ける形で進んでいきます。五月には中国地域の毛利氏との停戦交渉を始め、六月には四国地域の長宗我部氏と三好氏との抗争への介入を行います。八月には九州における諸大名(島津氏、大友氏、龍造寺氏)間の勢力抗争に加入して停戦令を押し付けています。

 天正八年からは、畿内に旧幕府の勢力がいなくなり、本格的に新しい政権への道が模索されていきます。後でお話ししますが、旧来の公権力であった室町幕府に対して、信長を頂点とする「安土幕府」と私が呼ぶ新しい武家勢力の確立を目指して、最後のステージに入っていくわけです。


●本能寺の変の十日後に明智光秀から雑賀衆に宛てた手紙


 ここで、史料を二つご紹介したいと思います。両方とも比較的近年に発見されたもので、本能寺の変の前後十日間ほどのものです。

 一つ目は、天正十(1582)年六月二日という本能寺の変勃発からちょうど十日後の史料です。2017年に見つかった史料で、〔史料1〕と提示しています。具体的には(実際の史料の)最初と最後部分のみになりますが、傍線部分を読んでいきたいと思います。

〔読み下し文〕
仰せの如く、未だ申し通わず候ところに、上意馳走申し付けられて示し給い、快然に候、然れども御入洛の事、即ちお請...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留