織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
二つの史料に見る天正九年の鳥取城攻撃
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(3)信長の西国御出馬その1
藤田達生(三重大学教育学部教授)
羽柴秀吉の中国攻めは、軍記物などに明るく語り継がれているが、実態は激しく厳しいものだった。そして第二次鳥取城攻撃は局地戦の域を超え、大将同士の対決を臨む苛烈さを呈していた。「城攻めの名手」と呼ばれた秀吉は、織田信長の意思を実現するための道具だったのか、それとも「逆もまた真」なのか。(全8話中第3話)
時間:9分08秒
収録日:2018年10月29日
追加日:2019年2月15日
≪全文≫

●二つの史料に見る天正九年の鳥取城攻撃


 天正九(1581)年になると、織田信長は明らかに毛利氏との戦いを意識して動くようになります。〔史料5〕を見てみましょう。鳥取城攻撃に関わりますが、かなり最終段階に近づいた頃、羽柴秀吉が宇喜多氏に対して出した手紙です。

 「鳥取之城押詰取巻候」というように、自ら鳥取城を厳しく攻めていることを宇喜多氏に伝えています。このように、秀吉は一貫して宇喜多氏と組んで、毛利方と戦う方向で邁進していました。この動きは、ついに信長も採用することになります。

 信長の一代記としてよく引用される『信長公記』の中から、天正九年の状況を示す部分を〔史料6〕に抜粋しておきました。傍線部分を解説しましょう。

 「因幡国とつとり表に至りて、芸州より、毛利・吉川・小早川、後巻として、罷り出づべきの風説これあり」

 ついに、鳥取城に向けて毛利氏の本隊が攻めていくという風聞があったということです。これに対して、信長はどのように判断をしたのかが、次の傍線部分です。

 「信長公御馬を出だされ、東国・西国の人数、膚を合せ、御一戦を遂げられ、悉く討ち果たし、本朝滞りなく御心一つに任せらるぺきの旨、上意にて、各其の覚悟仕り候」

 信長自身もこの戦争によって統一をきっちり終えていきたいということで、自らが出馬する意思を打ち出しています。信長と西国の雄である毛利氏の直接対決という方向がついに示されたのに対して、信長も並々ならぬ意気込みで向かっていくことがうかがわれる記述です。

 天正九年の鳥取城攻撃はすでに第二次に当たりますが、局地戦を脱し、大将同士の戦争になってくる。いわゆる決戦と位置付けられるような大きな段階に移っていったことが分かります。


●羽柴秀吉の本陣ではなかった「太閤ケ平」の用途


 今も鳥取城の周辺には、付城、陣城が非常によく残っています。中でも「太閤ケ平(たいこうがなる)」という大規模で突出した陣城が、現在もよく残っていて、研究も進んでいます。

 ここは、従来いわれているような羽柴秀吉たちの本陣ではなく、先ほど文献にあったように総大将である織田信長が親征してきた時の本陣としてつくられていたのではないかという研究があります。私自身もそうだと思います。実...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏