織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
本能寺の変はなぜ6月2日だったか…四国攻撃軍と明智光秀
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(7)派閥解体
歴史と社会
藤田達生(三重大学教育学部教授)
天正十(1582)年、織田信長にとって天下統一の最終段階が来ていた。三男の信孝を三好康長の養子として讃岐国主とし、康長は阿波国主とする方針を記した朱印状の中で、信長は自ら淡路に出向くと書いている。六月四日に予定されていた出陣は、四国攻めだったのだ。同時代の証言と西国配置構想から、本能寺の変直前における織田政権の、急激な膨張ゆえの危うさを見ていく。(全8話中第7話)
時間:14分27秒
収録日:2018年10月29日
追加日:2019年3月15日
≪全文≫

●四国戦に臨み、織田信長の朱印状が示したこと


 天正十(1582)年になると、織田信長は四国をどうするのかについて本格的に指令し始めます。これは、実は徐々に変わってきたものです。具体的には長宗我部氏がどんどん追い詰められ、三好氏がどんどん有利になっていく動きでした。

 〔史料11〕を見ていきましょう。天正十年五月七日付で信長が三男の信孝に宛てた指令書です。結果的には、これが信長の最後の朱印状になりました。

 ここに書かれているのは、四国に軍勢を発進させるという具体的な話です。一般的には「国分け」といいますが、平定した諸国をどのような大名に張り付けていくのか、国守大名をどのようにしていくのかなどを指令したものです。

 傍線箇所では、四国での戦争を控える息子・信孝に対して「讃岐国之儀、一円其方可申付事」と書いてあります。これまでは伊勢で二軍規模の小大名だった信孝ですが、ついに一カ国を預けられる約束がなされたということです。二か条以降は、阿波の国については、もともとの大名である三好に預ける。その他の国と書いてあるのが当然伊予と土佐になりますが、これらは信長が淡路に至ったら、その人事を発表すると書いてあります。

 信孝に対しては、三好康長を自分の主君あるいは親と思って仕えるよう諭してもいます。もうこの段階で、信孝は三好家に養子として入っていたと見ても良いのではないかと思います。この段階では、四国の東の部分(讃岐、阿波)については、信孝と三好康長が返り咲くことが約束され、長宗我部氏は非常に押し込まれていることがうかがわれる史料です。


●織田信長は本能寺の変がなければ四国に出陣していた?


 もう一つ、重要な情報があります。私たちは、本能寺の変がなければ織田信長は備中高松に出陣していくのではなかったのかと思いがちですが、実はそうではありません。信長自身が「六月四日に出陣する」と書き、他の資料でも確かめられますが、行き着く先は備中高松、つまり羽柴秀吉の待っている毛利攻めの本陣ではなく、長宗我部攻めの本拠地となる淡路に行くことが、ここに書かれています。四国攻めだったのです。これも非常に重要な情報だと思います。

 これについては、非常に面白い証言があります。〔史料12〕をご覧ください。慈円院正似というお坊さんが書いた書状で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「アカデメイア」から考える学びの意義(4)学びの3つのキーワード
より良い人生への学び…開かれた知、批判の精神、学ぶ主体
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(2)神々のささやく世界
「神々のささやく世界」では神々の声が行動を決める
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規