織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
安土と鞆の二重政権がしのぎを削った7年間
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(2)画期としての天正八年
藤田達生(三重大学教育学部教授)
天正八(1580)年三月、勅命講和による大坂本願寺退去。五月、織田信長と毛利氏の間に講和の動き。八月、九州三大名の調停案に潜む信長西国出馬の予兆。この年の「安土幕府」の動向は目まぐるしく変化し、歴史にあらかじめ定められた方向がないことを教えてくれる。日本史の画期となったこの年の歴史に、新しい研究や史料が踏み込んでいく。(全8話中第2話)
時間:20分03秒
収録日:2018年10月29日
追加日:2019年2月8日
≪全文≫

●天正十年の足利将軍、中央を臨む動き


 お話の前提を少し申し上げます。第1回講義で、第十五代将軍足利義昭に触れました。歴史に詳しい人でも、「え? 天正十(1582)年の本能寺の変の時期に義昭をうんぬんするというのは、その十年も前に室町幕府が崩壊しているから、あまり意味がないのでは?」と、いぶかられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、明智光秀が義昭を奉じていることは、第1回講義で示した〔史料1〕から明らかにうかがえるのです。

 宇治槇島城で織田信長との対戦に敗れ(元亀四<1573>年)、義昭は没落しますが、その段階で室町幕府が崩壊したという説を私は取りません。十年後の当時においても現職の将軍です。天正四(1576)年からは、備後の国・鞆の浦(現在の広島県福山市郊外)に亡命政権を置いています。

 鞆の浦は瀬戸内海の中央に位置し、交通の要衝として古来栄えた港町です。人や物が流通する結節点であり、最も情報の得やすいこの場所を拠点にした足利将軍は、「鞆幕府」と私の呼ぶ亡命政権の中核をここに起き、帰洛戦(上洛戦)を望んでいました。

 彼はここをいわゆる信長包囲網の中核にして、京都に幕府を復興させるために全国の大名等に声を掛け、自分に協力をしてくれる勢力を集めていたのです。正確には、義昭と毛利氏(具体的には当時、当主であった毛利輝元)との連合政権だったと私は見ています。


●安土と鞆、二重政権がしのぎを削る7年間


 天正元(1573)年以降の織田信長は天下統一戦を進めていくものの、それによって信長の力が一挙に全国に展開したわけではありません。とりわけ西国(西日本)においては、まだまだ室町幕府が力を持っている、もっといえば室町時代が回っている状況が長らく続いているわけです。そういう意味で、天正四年以降は、信長の安土を中核とする武家政権である「安土幕府」と、西日本を中心として力をなお保っている「鞆幕府」の二つが厳しくしのぎを削っている二重政権状態、あるいは内乱と表現できるでしょうか。そのような中で歴史が動こうとしていると、私は見ています。

 例えば、天正七(1579)年にはこういうことがありました。京都の将軍家ゆかりの浄土宗寺院ですが、応仁の乱で退転していた寺院が復興に向けて動き始めます。当然のことだと思いますが、正月八日付の村井貞勝の文章で、信長から再興を許可されています。こ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(3)健康産業イニシアティブ実装に向けて
使えるデータで「健康のプラットフォーム」を実現しよう
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
教養としての世界史とローマ史~ローマ史講座・講演編(1)古典と世界史
教養の基礎となるのは、古典と世界史である
本村凌二