織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
本能寺の変直前の派閥の「三層構造」
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(8)結び~中世と近世の相克~
藤田達生(三重大学教育学部教授)
「事件史」や「人物史」として語られることが多かった本能寺の変だが、それでは本質的な見方にならないことをこれまで7回に分けて伝えてきた。これは織田政権の持っていた矛盾が臨界点に達して爆発したものである。織田政権の本質を知り、戦国末期の日本の姿を知るために、本能寺の変にいたる「三層構造」を捉えていく。(全8話中第8話)
時間:16分08秒
収録日:2018年10月29日
追加日:2019年3月22日
≪全文≫

●本能寺の変直前の「三層構造」を見る


 天正十(1582)年。織田信長は、まさしく天下統一前夜に当たる時期と認識していたと思います。しかしながら、彼自身の政権内部には激しい亀裂が走っていました。信長の短期間における躍進を支えた重臣層の間に、抜き差しがたい矛盾や対立が起こり、盤石と思われた織田政権をむしばみ、徹底的に腐食させる事態を迎えていました。信長はこれに気付いていたのかどうか。私自身、信長自身はどうだったのだろうと思うことが多々あります。

 ここで、〔図3〕を見ていただきます。本能寺の変直前の、明智光秀、羽柴秀吉派閥関係の概略を示した図ですが、実は三層構造で出来上がっています。

 まず、地域に一番近い部分で説明をしておきましょう。真ん中より下、「敵対」と書いている部分は、四国をめぐる敵対関係です。

 三好康長は、本能寺の変がなければ自分の本国、阿波の国主になる予定です。三好の本家ではありませんが信長に見いだされ、秀吉のバックアップもあって三好家を代表する人物として台頭してきていました。

 彼と対立して激しく戦っていたのが、土佐の戦国大名であった長宗我部元親です。元親の方は、四国を統一する寸前まできていました。当時の彼は、なんとか信長と戦争しない方向で動いてきたのが、もはやどうしようもないところまで追い込まれ、最後の選択肢として選んだのが、それまで対立していた毛利氏との連携でした。その仲介役として足利義昭が動いていたことも、申し上げた通りです。

 毛利輝元は伊予の河野通直と親戚関係です。四国の中では伊予をめぐる河野氏と長宗我部氏との対立があったため、そこを交渉の端緒として長宗我部氏と毛利氏の連携が築かれつつありました。ここには香川氏や金子氏というような、讃岐や伊予の国人領主も入っていましたし、河野氏に従っていた伊予の西園寺氏などもおり、非常に幅広い勢力が連携に向けて動きを開始していたことがうかがえます。これが、毛利ー長宗我部同盟の動きでした。


●織田一門や近習への「世代交代」と明智光秀・羽柴秀吉


 三好の方には一族はいますが、直接的には羽柴秀吉の甥に当たる秀次が養子に入ります。さらには、三好信孝というように、(信長の三男)信孝も三好の養子に入ってきます。さらにもう一つ重要なのは、秀吉の振る舞いです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政