天下人・織田信長の実像に迫る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
本能寺の変は織田信長を討つだけのクーデターではなかった
天下人・織田信長の実像に迫る(9)本能寺の変・前編
歴史と社会
柴裕之(東洋大学文学部史学科非常勤講師/駒澤大学文学部歴史学科日本史学専攻非常勤講師/ 文学博士)
 歴史上の大きな謎とされてきた「本能寺の変」。これまで、明智(惟任)光秀の「怨恨説」から、様々な人物や勢力による「黒幕説」まで、いくつもの説が立てられてきた。だが、真相は当時の織田家と周辺大名の状況を見れば、おのずと見えてくる……。果たして当時の織田政権の姿はどのようなものであったのか。そして、光秀はいかなる立場で、いかなる事態に直面していたのか。史実から浮かび上がってくるものとは?(全11話中第9話)
時間:13分42秒
収録日:2020年3月17日
追加日:2020年8月24日
≪全文≫

●本能寺の変は織田信長を討つだけのものではなかった


 こうして「天下一統」を進め、さらには天下人として織田家が存続していくための政治構想を進めていた織田信長なのですが、結局どうなってしまうか。皆さんもご承知のように、天正十(1582)年六月二日、信長が重臣である惟任光秀(明智光秀)によって討たれてしまうということで、その構想は中断となってしまうわけです。

 この「本能寺の変」といわれるクーデターをどう捉えるか。これが次の問題になるかと思います。一般に本能寺の変というと、革命児である織田信長に対して、保守的で常識人的存在といえる惟任光秀との対立の下で起きたとされ、その惟任光秀の後ろには黒幕がいたのではないかといったことが注目されます。

 今回の講義で押さえておいていただきたいのは、このクーデターが信長を討つだけのものではなかったということです。どういうことかというと、その同日には信長の後継者であった織田信忠が討たれ、また、日常的に彼らの供をする小姓衆や親衛隊などの多くも討たれてしまったということです。さらに、信長と信忠を討った光秀が、その後どうしたかということにも注目しなければなりません。

 私たちはどうしても、信長を討った、あるいは信忠を討ったというところに注目してしまいますけれども、実はその日に光秀はある所へ向かおうとしています。それがどこかというと、織田政権の拠点である近江の安土城です。これを押さえなければならないと思います。

 実際に光秀が安土城を押さえることになるのは、三日後の六月五日になってしまうのですが、それでも、ここで押さえておいていただきたいのは、これによって何が成し遂げられたかです。光秀が成し遂げたのは、ただ信長を討つだけではなく、信長と後継者の信忠といういわゆる権力の中枢を解体させた。そして、織田政権という権力の拠点である安土城を掌握した。このことを押さえておかなければなりません。


●同時代の政治権力が引き起こした必然としての本能寺の変


 これまで、本能寺の変というのは、信長と光秀という個人の関係を中心に、光秀の持つ性格や、あるいは光秀の後ろに誰かがいたのだということで考えられてきたのではないでしょうか。しかし、果たしてそういう視点で捉えていっていいのかという疑問もあります。

 どういうことかというと、当時の人々は今の人々...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
川口淳一郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
編集部ラジオ2025(23)垂秀夫元中国大使が語る習近平中国
垂秀夫元中国大使に習近平中国と米中関係の実態を聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える
今井むつみ
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(5)現代社会の問題点と親性脳のスイッチ
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
いま夏目漱石の前期三部作を読む(2)漱石とメンタルヘルスの関係
『漱石の病跡』――江藤淳が評価した病跡学による漱石論
與那覇潤