天下人・織田信長の実像に迫る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
本能寺の変前後で光秀に起こった突発的偶然と予期せぬ事態
天下人・織田信長の実像に迫る(10)本能寺の変・後編
柴裕之(東洋大学文学部史学科非常勤講師/駒澤大学文学部歴史学科日本史学専攻非常勤講師/ 文学博士)
「本能寺の変」についての研究は『石谷家文書』発見により進み、浮上したのが「四国問題」である。長宗我部氏をめぐる周旋役を担当していたのが惟任家であったため、四国の動向は光秀の将来を左右する問題となる。そんな折に信長から下ったのが、中国へ進軍して秀吉を救援せよとの命令だった。(全11話中第10話)
時間:12分51秒
収録日:2020年3月17日
追加日:2020年8月31日
≪全文≫

●四国をめぐる光秀と惟任家の苦悩


 (前回お話しした四国問題と)光秀や惟任家はどういう関係があったのでしょうか。実は、織田・長宗我部の関係を取り持っていた存在こそが光秀であり、さらには惟任家だったわけです。

 どのようなつながりからそのような配置がなされていたのかというと、どうやら光秀の重臣であった斎藤利三という人物が働いていたようです。彼の親戚関係が長宗我部元親とつながっていたことを活用して、織田・長宗我部の関係はつくられていました。光秀は、長宗我部との関係を築くことによって四国の運営に携わり、織田政権の発展に貢献していたことになるわけです。

 ところが、(天正十年の)今、事態は変わりつつあります。要するに、光秀が関係構築に努めてきた長宗我部が、敵対する存在になる。そういった状況は、当然、その関わりのなかで織田政権における重鎮という立場を築いてきた惟任家の行く末にも大きく関わっていくことにもなります。

 こうしたなかから光秀(惟任家)側としては、当然この関係を維持しなければならないという動きが出ます。そこで、どうするかというと、光秀は利三らを使って、長宗我部側に信長の求めに応じるように働きかけをしてくるわけです。この結果、五月二十一日にどうやら長宗我部氏が条件付きで応じたことが、『石谷家文書』という史料から分かってきています。


●四国問題に下した決断は、三つの選択肢の一つだった


 ここで注目していただきたいのは、それがいい事態だったのかということです。長宗我部の問題については、彼らがそういう態度を取ったことでもう終わるはずではないかと思われるかもしれません。しかしながら、まずはこの五月二十一日の書状が、果たして本能寺の変前の光秀に届いたかという問題が一つあります。

 さらに、五月二十一日段階の惟任家の状況を見ると、光秀(惟任家)は四国問題よりも中国地方における働きを求められます。要するに羽柴秀吉の支援に向かえと要請されたわけで、中国地方に専念する立場に回され、四国の問題からは外されてしまう状況になりました。惟任家からすれば、これは将来に対する不安を大きく募らせていくものでした。

 こうしたなかで、どのような対応が取られていくかが問題になります。実は、このようなあり方は各地の戦国大名家でも見られることでした。そういう場合にどういう対応が取...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆