天下人・織田信長の実像に迫る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
織田信長は決して同時代から逸脱した存在ではなかった
天下人・織田信長の実像に迫る(11)「有姿」を求めた天下人・織田信長
柴裕之(東洋大学文学部史学科非常勤講師/駒澤大学文学部歴史学科日本史学専攻非常勤講師/ 文学博士)
織田信長を伝説として祭り上げる「革命児」や「革新者」という従来の評価が現在では見直されていることをシリーズ内で伝えてきたが、結局、織田信長とはどういう人物であったのだろうか。最終話では、彼が生きた時代、追求しようとした理想との関係で信長像を読み解く。(全11話中第11話)
時間:5分10秒
収録日:2020年3月17日
追加日:2020年8月31日
≪全文≫

●「有姿」を追求し、人にも強要した織田信長


 今回は、最後のお話になります。以上、見てきたことを踏まえて、織田信長という存在をどう捉えるかということをお話ししたいと思います。

 一般的には、時代を刷新していく革命児という存在として信長は描かれているかと思います。ところが、これまで話してきたことを見ますと、彼は決して同時代から逸脱した存在ではなかったことが分かってきたのではないでしょうか。また、彼が同時代の諸勢力とも共存できる存在であり、そのなかで生きて活動した天下人であったということも、明らかになってきたかと思います。

 では、そういった信長がどのような人物であったのかを見ていくと、今お話ししたように、信長は決して同時代から逸脱した存在ではありません。その一方で、彼は外聞や世評、世の中の人たちがどのように見ているかを気にしたり、あるいは「有姿(ありすがた)」といって「あるべき姿」を求めるような、現実の下で理想を描いていた人物でもありました。

 現実の下で描いた理想を、自分だけではなく、他人にも強要する。ここに信長を天下人という立場へ築き上げていく要素もある一方、そうしたことを強要する姿勢に対する反発や対立を生む原因もあったわけです。

 そういった信長の在り方を見てくると、なぜ信長の下で謀叛や、最終的には「本能寺の変」が起きてしまうのかということが見えてくるのではないでしょうか。


●同時代から逸脱した存在ではなく、同時代人として生きた織田信長


 信長は、決してその同時代から逸脱した存在ではない。けれども、信長が求めるあり方が強要される人々にとっては、それに対する反発を抱えたり、また対立を生んでくることになるわけです。そうした視点で見てくると、信長は同時代に生きる人間であったと同時に、最終的に彼が亡くなる本能寺の変という事件も、その同時代のなかで起きた政変であったと捉えることができるのではないでしょうか。

 もちろん本能寺の変により天下人である信長が討たれたことで、信長の下で進んでいた国内の統合が中断し、反発を持っていた勢力が再び動き出します。そういった意味で、大きな事件であったことは間違いありません。しかしながら、信長が決して時代から外れた存在ではなかったということだけは、繰り返し申し上げておきたいと思っています。


●信長に求められた「天...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ