天下人・織田信長の実像に迫る
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
織田信長が進めていた「天下一統」という事業とは
天下人・織田信長の実像に迫る(6)天下人としての「天下一統」
柴裕之(東洋大学文学部史学科非常勤講師/駒澤大学文学部歴史学科日本史学専攻非常勤講師/ 文学博士)
畿内を制した織田信長は、地方に対してもさまざまな手を打っていく。敵対する者には武力で向かい、そうでない者には中央に従うことによる共存を呼びかけていった。天下という存在の下で、それぞれの地域が治まり、まとまった活動をしていくことが、足利家以来の「天下一統」の理想だったのである。(全11話中第6話)
時間:13分22秒
収録日:2020年3月17日
追加日:2020年8月3日
≪全文≫

●地域勢力との関係と織田信長の「戦争」


 前回は、織田信長が中央において朝廷や宗教(寺社)勢力の保護に努める存在だったというお話をしました。続いては、各地の大名や国衆とはどうあったのだろうかという問題が上がってくるかと思います。

 一般的に信長は、やはり「天下布武」という言葉から、地方の大名や国衆などの存在を打ち滅ぼして国内を一つにしていくようなイメージが持たれています。いわゆる「天下統一」という視点から、その関係が考えられてきたかと思いますが、実際にはどうなのか。

 このことは、信長の「戦争」というところにも関わってきます。戦争という視点で信長を見ていくと、信長の戦争も当時の戦国大名たちと同じ要因から行われていたことが分かっています。

 信長の勢力圏である「領国」を維持していくにあたっては、いろいろな領土問題が起きてきます。そうしたなかで、領土の解決や維持を行うために信長が選んだのが「戦争」という道だったということです。

 ただし、注意してほしいことがあります。これまでに述べたように、信長は「天下人」としてあるということです。そのなかで、信長を天下人として認めない勢力はどうしていったかというと、信長に敵対するためにかつての天下人だった足利義昭を擁していきます。

 つまり、信長の戦争は、戦国大名と同じように領土問題に端を発しつつも、もう一つ、足利義昭との関係のなかで起きていたわけです。そうした背景のもと、例えば天正四(1576)年には安芸の毛利氏や越後の上杉氏と対立していく。さらに、それ以前から対立していた甲斐武田氏との戦争も展開していくということになってきます。


●大名や国衆と共存する天下の在り方を描いた織田信長


 こうしたなかで戦争が行われていくわけですが、信長は全ての物事を戦争によって解決していこうとするスタンスで進んでいったのかというと、決してそうではありません。その一方でもう一つ、注目していただきたいのは、信長が各地の大名や国衆と通交を行っていたことです。

 つまり、領土問題が発生しなければ、あるいはうまく収まるようであれば、信長と大名や国衆という存在は共存し合える事態もあったということです。実際、信長は、そういった大名や国衆との通交を重んじていくスタンスを取っています。

 このことから見えてくるのは、従来の私たちのイメージに刻...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史