戦国武将の経済学
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
南蛮貿易の真実…奴隷貿易とバテレン追放、朝鮮出兵の理由
戦国武将の経済学(2)織田信長と九州大名の南蛮貿易
小和田哲男(静岡大学名誉教授/文学博士)
織田信長と豊臣秀吉の時代は、南蛮貿易が奨励された。日本は何を輸出し、何を輸入していたのだろうか。なぜ秀吉は「バテレン追放令」を出さざるを得なかったのか。第2回では信長と九州大名の南蛮貿易、さらに秀吉の朝鮮出兵の謎を、経済面から掘り下げていく。(全4話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分35秒
収録日:2019年11月22日
追加日:2020年3月1日
≪全文≫

●南蛮貿易をうまくコントロールした織田信長の鉄砲戦略


―― もう一つ、織田信長については「南蛮趣味」がよくいわれます。当時は南蛮人(ポルトガル人やスペイン人)の訪問が盛んだったために、南蛮貿易という形で進んでいくわけですけれども、そもそも南蛮貿易というのは、何を輸出して、何を輸入したのでしょうか。

小和田 これは、もちろんポルトガルやスペインあたりのヨーロッパからの物も来ますが、多くは東南アジアおよび中国ですね。そのあたりの物資を、南蛮人が日本に運んでくる。それで「南蛮貿易」といいます。

 当時、日本と明は、明の「海禁政策」によって貿易関係がありませんでした。でも、中国産の生糸などは高い値で売れていますので、(日本としては)そういったものは欲しい。そうなると、一つには密貿易のような手もありますが、合わせて南蛮商人たちが公のルートでそれらを運んでくる。それが南蛮貿易です。

 もう一つ、大きなことは、これも最近かなり分かってきたことですが、鉄砲の弾です。従来、鉛は日本でもいっぱい採れるので、日本産の鉛の弾だろうと思っていたら、いろいろ分析をした結果、中国や東南アジア(タイ)の鉛などが大量に使われているのが分かってきました。

 鉄砲そのものの技術もヨーロッパから来ましたが、鉄砲の弾の鉛、それから鉄砲の弾を飛ばす火薬もそうだったようです。火薬は、硫黄と木炭、硝石の混合です。そのうち硫黄と木炭は国内で賄えますが、硝石は日本では採れないので、東南アジアから来ています。

 面白い例なのですが、よく信長の「鉄砲戦略」といって、長篠・設楽原の戦いで、鉄砲三千挺で武田を破りました。これは、単に鉄砲が大量にあったからということではなくて、火薬の原料になる硝石を信長が堺の貿易で押さえていて、武田のほうにはほとんど回らなかったからです。

 武田ももちろん鉄砲は持っているけれども、そのために大量の鉄砲を使うことができなかったのです。そのように、信長が南蛮貿易をうまくコントロールしていたことが、勝因だと思います。

―― 前回、先生は「商人との結託」というような話をされました。堺の商人からすると、南蛮貿易の窓口的な立場で火薬や鉛を扱って、儲ける。信長はそれをコントロールして、自らの軍事力を高めるとともに、堺の儲けを回流させる、というような流れができていたということですね。

...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦