●プーチン政権の基本モデルは「強いリーダー」の存在
―― 皆さま、こんにちは。本日は山添博史先生に、プーチン政治についてお話しいただきたいと思っています。山添先生、どうぞよろしくお願いします。
山添 よろしくお願いします。
―― プーチン政治というと、まさに2022年2月に、ウクライナ侵攻がありました。その前からかなり強硬的な政治を行ってきたということで、実際にどういう政治モデルなのかをまずはお聞きしたいと思います。そもそもウラジーミル・プーチンが出てきた背景にはどういうことがあるのでしょうか。
山添 プーチンは(ロシア連邦)初代のボリス・エリツィン大統領の時、その最後の頃に首相に任命されて、そのあと大統領になりました。プーチンが着任してからの2000年以降の物語は、1990年代はとても混乱していたのですが、それがプーチンの下で安定してきて、経済も社会も発展するようになってきたというものです。そういったこと(混乱・苦難)を克服する強いリーダーがプーチン政権の基本的なモデルです。
―― よくいわれることとして、彼はもともとKGB出身だったという話があります。それについてはどうお考えですか。そのあたりも、そういうことにつながるという理解でいいですか。
山添 確かにKGB出身ではあって、そこの教育を受けています。そして、1970~80年代当時のKGB手法も今、現れているところはあるのですが、彼はKGBのトップになってからロシア連邦の政権のほうに行ったわけではありません。途中、サンクトペテルブルクの市役所で、市長の下で経済政策を担当したりするなど、いくつかの経歴を経てモスクワに入っているので、KGBだけでは分からないと思います。
―― なるほど。そのあたりもまた後ほど詳しくお伺いしたいと思います。
●ツァーリとしての役割を担って「叱る人」プーチン
―― ここでは簡単な概要をお話しいただきたいと思いますが、プーチンの統治の特徴とはどういうものでしょうか。
山添 上の絵で示している通り、昔ながらのロシア帝国の皇帝であるツァーリのモデルを考えると分かりやすいと思います。庶民の上に、庶民を搾取して悪いことをし、言うことを聞かない、あるいは意味の分からない貴族や役人がいます。しかし、庶民はツァーリの慈悲がこれ...