プーチンのロシア―その思想と戦略―
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突然のウクライナ侵攻…ロシア将兵を危険にさらす非合理性
プーチンのロシア―その思想と戦略―(5)侵攻の論理と情報戦略
山添博史(防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長)
心理戦術を中心に行ってきたロシアの対ウクライナ軍事戦略だったが、それは突如として武力行使に変わった。世界から孤立し批判が強まるプーチンだが、感情的で非合理ともいえるこの戦争を続ける理由は何なのか。一種の情報戦である「社会言説空間作戦」と「西欧社会分断」作戦とあわせて解説する。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分46秒
収録日:2022年3月4日
追加日:2022年4月27日
カテゴリー:
≪全文≫

●突然のウクライナ侵攻と恐ろしいほどの非合理性


―― そうすると、これまでは比較的生かさぬように、殺さぬように、ウクライナ国内の内乱の要因を作って、従わせようとしていたということですね。プーチンの頭の中では、ウクライナへの侵攻は論理的に必然のことになっているのでしょうか。

 前回の話でいうと、今までは、ある意味で旧来的な、戦争には入らない範囲でいろいろとハイブリッド工作を仕掛けていって、何とかしたいと考えていたということです。それを一気に今回のような紛争状態に持っていったのは、プーチンの頭の中ではもうそういう局面が来たという認識なのでしょうか。

山添 そうなったと思いました。このハイブリッドの図を見てください。図の一番下の行に当たりますが、2021~2022年まではウクライナ心理戦をやってきたと考えていました。その右側に軍事力行使のオプションがありますが、そこに至る前に交渉を有利に進めていました。そして、その三つ上のドンバス紛争は継続しています。つまり、ロシアが動かせる武装勢力がウクライナ領内に入っているということです。そういう軍事力のテコもありながら、ウクライナを揺さぶっていくと思っていました。また、この軍事オプションも伝統的な敷居を越えないものをやると思っていました。

 つまり、ドンバス紛争の中で軍事力を拡大させ、圧力をかけて交渉のテーブルに着かせる。そういったことをやることによって、伝統的な敷居を越えずに交渉ができて、ロシアが払う代償もこの中に収めることができる。そうしたリスク回避、コスト重視の戦略をプーチンはずっと進めてきました。

 シリアであからさまな作戦をやりましたが、あれもコストは一定程度超えないように、管理しながらやってきました。そのように、プーチンのことをずっと見てきました。ですから、いろいろと悪いことをやってきたとはいえ、ロシア自身にすごいリスクが及ぶような通常戦争をいきなり始めるのは、これまでのパターンと全然違っていて、そこが一番のショックです。

 もう1つ、それよりもショックなのは、非常に大きな非合理性です。ウクライナを統一したいのは分かりますが、2022年2月24日の開戦時の演説も、「ウクライナ人、お前らにはナチスに協力した恥ずべき祖先がいる。その恥ずべき者たちの子孫であるお前らはネオナチの...

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