プーチンのロシア―その思想と戦略―
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ハイブリッド戦争を理解するための“伝統的な敷居”とは
プーチンのロシア―その思想と戦略―(3)「ハイブリッド戦争」とは何か
山添博史(防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長)
2014年、ロシアがウクライナ領であったクリミア半島を占拠したことで、「ハイブリッド戦争」と呼ばれる軍事戦略が注目を浴びるようになった。ほぼ無血でのクリミア併合はどのようにして可能になったのか。なぜウクライナは抵抗できなかったのか。その真相に迫る。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分21秒
収録日:2022年3月4日
追加日:2022年4月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●直接的な武力衝突にとどまらない「ハイブリッド戦争」


―― ジョージアからクリミアという話もありましたが、第1話の講義では、クリミア半島を併合した時には「ハイブリッド作戦」だったというお話がありました。これについて詳しくご説明いただけますか。

山添 「ハイブリッド戦争」、あるいは「ハイブリッド作戦」は、広く注目を集めるには有効な言葉ですが、中身がとても分かりにくいという特徴があります。こちらの図で私なりの理解を示そうと思います。図では最初に、縦の赤い線で示した「伝統的な敷居」から説明を始めます。ここ(縦の赤い線)から右側が普通の軍事紛争で、左側がその敷居を越えていない、よく分からない状態です。

 この手法には、政治的手法と強制力を使った軍事的手法があり、それらを交えています。これにも段階があって、例えばクリミア半島の併合の時には「社会言説空間作戦」を使っていました。

 もともとクリミア半島はロシア語が強くて、ウクライナには虐げられていると思っている住民が多くいました。ロシア語メディアでそれを助長することを言っていたからです。2014年2月にキエフで政変が起こった時、ここでさらに社会言説として広められたのが、ウクライナのナショナリストがクリミア半島のロシア語系住民の権利を抑圧しに来る(「殺しに来る」といった言い方もありました)というものです。

 これによって、図に「プロキシー」と書いていますが、立ち上がらなければいけないと考える代理勢力がクリミア半島の政権を取ります。これはかなり違法なやり方で、議会を押さえて自分たちだけの議会を開き、首相を選んで政権を奪取しました。そこではアクショーノフという、これまでまともなことをやってこなかった人を首相にし、その人が住民投票、独立、合併まで行いました。それを支えるのに、少しだけロシアが軍事力を行使しました。それは非公然部隊(標識のない「リトル・グリーン・メン」)です。それがクリミア半島の議会の周りや、ウクライナ軍の施設の周りなど要所を強制力で押さえて、メインは政治工作で動かしました。そのため、ほとんど無血でした。1カ月ほど使って、住民投票や併合といった動きを進めたのです。


●伝統的な敷居を超えさせないロシアの戦略と圧力


山添 ここで大事なのは、この伝統的な敷居を越えてい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史