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プーチンとオリガルヒの不可思議な関係とロシア社会の闇

プーチンのロシア―その思想と戦略―(2)政権初期の成果とロシアの闇

山添博史
防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長
概要・テキスト
ロシア連邦初代大統領であるエリツィンは民主主義と市場経済を導入し、急激な体制の転換を行った。それにより政治や経済は混乱したが、次の大統領に就任したプーチンは独立勢力のようになっていた新興勢力を統制することで社会の安定を進めた。しかし、ロシア社会には闇の部分も少なくない。チェチェンの闇とともに解説する。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:40
収録日:2022/03/04
追加日:2022/04/06
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≪全文≫

●エリツィンの政治がもたらした混乱とその要因


―― では、続いて深掘り編として、プーチン政治をどう考えていくかについてお話をお伺いしたいと思います。まず前回の導入の講義のところで、プーチンが登場した背景として、ソビエト連邦が崩壊し、エリツィンが(ロシア連邦の初代)大統領となり、そこで混乱したものを立て直したという話でした。そもそもエリツィンの政治とはどういうものだったのでしょうか。

山添 エリツィンがやったことは、ソビエト連邦に対して自分の権力を強めることです。それまでほとんど実体がなかったロシアを率いて、そこの大統領になって、ゴルバチョフから権力を奪いました。そのため、ロシアとウクライナとベラルーシの三カ国を中心にまずソビエト連邦から独立しました。そして、計画経済をやめて、ロシアを市場経済にします。それは投票などを西洋の民主主義モデルにすることなので、これはかなり急激な変化でした。経済的にもショック療法などを使ったので、それまでとはかなり違う社会に急激に移行したのです。それに伴って、多かれ少なかれ15の共和国のどこもそうした混乱があったので、これ自体はエリツィン政治の失敗というわけではないと思います。

―― あまりにもドラスティックすぎたということでしょうか。その後の動きでよくいわれるのが、新興財閥が出てきて、庶民が少し混乱していくという話です。そのあたりはどう理解すればいいのでしょうか。

山添 そこには新興財閥の話もあるのですが、もう一つとして連邦の話があります。ロシアの中にはいくつかの民族共和国と、その他に州や地方などもあります。民族共和国にはかなり大きなアイデンティティの違いがあって、その共和国にはその共和国の憲法と大統領がいます。つまりマトリョーシカのようになっていて、その外側に大きなロシア連邦の憲法と大統領がいるということです。その間の法律体系にかなり矛盾があるまま来てしまったことが、エリツィン時代の混乱の一つの要因です。

 もう一つは、(シリーズ内で)「オリガルヒは新興財閥だ」と言いましたが、ソ連時代の国有財産は巨大で、それをわずかな人たちが不公平な富を、ある意味好き放題にといいますか、勝手に独占してい...
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