プーチンのロシア―その思想と戦略―
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
歴史観と文化にみるウクライナ人とロシア人の大きな違い
プーチンのロシア―その思想と戦略―(4)ロシアとウクライナの歴史観
山添博史(防衛研究所 地域研究部 米欧ロシア研究室長)
ロシアによるウクライナ侵攻の背景には、ロシアとウクライナ両国の歴史観の違いがある。自由を求めるウクライナと、支配の論理を振りかざすロシアの溝は、プーチン政権の下でますます深まっている。今回の武力行使は、焦りを感じたプーチンの失敗なのか。(全6話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分35秒
収録日:2022年3月4日
追加日:2022年4月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●ロシアとウクライナでは歴史観に大きな違いがある


―― 例えば、実際にはウクライナの場合、ウクライナ人なのか、ロシア人なのかということもあるので、歴史意識について先ほどの図でご説明いただきたいと思います。ロシアの歴史からして、この場合ではウクライナですが、独立なのか、一緒なのか、そこはどう見ていけばいいのでしょうか。

山添 ロシアとウクライナが兄弟だという言説ですが、これはソビエト連邦の時にもかなりあったはずです。そのことは、現代と、最初の祖先であるキエフ・ルーシを一緒くたにしているといいますか、歴史をかなり飛ばしてしまっている話です。

 ロシア連邦になっている今の政権は、さかのぼっていくとモスクワ出身です。モスクワはキエフ・ルーシの一族であり、その王族ではありますが、日本でいえば(かつての)源氏の大名である東国の者が、そこで強くなっていくようなものです。しかもモスクワは、キプチャク=ハン国といわれるモンゴル人の支配を経て、周りのカザン=ハン国などといった多民族を統合していく過程で、東側の世界である中央ユーラシアにある遊牧帝国を支配するという論理を持って中央集権的な帝国になり、それがロシア帝国になってきています。

 実はそういう歴史をウクライナは共有していません。ウクライナはキエフ・ルーシのあとは、いくつかの諸侯に分かれていました。そのいくつかはポーランド=リトアニアの下に入っているのですが、そうした状態が何百年も続いていました。有名なのは、1648年にポーランドに対して反乱を起こしたボフダン・フメルニツキーという人で、ウクライナ・コサックです。彼らに代表されるように、今につながるウクライナの国民意識やナショナル・アイデンティティの背景には、こうした「自由を求めて戦う、立ち上がる」という歴史があります。それは、今のロシアの統治勢力とは少し違います。それを受け継いで、ロシア帝国の末期や、ソビエト連邦の一時期など、モスクワの権力が及ばない時にウクライナには何度か独立勢力ができています。それを結局はモスクワが叩きつぶしてきました。

 今プーチンが考えていることは、ウクライナは叩きつぶすことで統合されるのであり、これまでの歴史がそうだったという意識ではないかと思われます。それは実は、「われわれは自由であり、独立して、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ