ウクライナ戦争に揺らぐ国際秩序
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アメリカの「ベタ下り」がプーチンの蛮行の根拠となった!?
ウクライナ戦争に揺らぐ国際秩序(3)日本の立ち位置とアメリカの責任
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ウクライナに対する一方的な戦争に反発し、日本や欧米諸国はロシアに対して厳しい経済・金融制裁を科している。しかし、ロシアの軍事侵攻は止まる気配がなく、制裁が十分に機能しているとはいえない。国際社会はなぜプーチンを止められなかったのか。彼の政治思想にある背景とアメリカの責任について解説する。(全4話中第3話)
時間:13分27秒
収録日:2022年4月1日
追加日:2022年5月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●制裁への対抗措置として、日本との平和条約交渉を中断


 皆さん、こんにちは。

 前回までウクライナ戦争について語ってきましたが、(この問題についての三つ目の観点として、)日本の立ち位置について少し触れる必要があると思います。

 今回のウクライナ戦争は、ウクライナとロシア、あるいはNATOとロシアという対立軸の下で展開されています。国際的な枠組みという点においてみてみると、ロシアに対する経済制裁、あるいは金融制裁が科せられているという現実があります。この点で、G7の一員である日本もまた、ロシアに対する制裁に加わり、かつての日本よりも、はっきりと決意を込めてこの制裁を実行していることを、岸田政権からは感じます。

 ここでロシア側からの視点を見てみましょう。シベリアの軍管区に極東軍管区があります。この極東軍管区からシリアに兵員が派遣されたり、あるいはウラジオストックから艦隊が派遣されています。ヴァリャーグという旗艦が地中海から指揮したように、目下のウクライナにおける非常に不利な戦況を増援するために、極東軍管区などからも、ウラジオストック経由で兵員や部隊、武器の配置転換が行われていると伝えられています。

 この場合、彼らは宗谷海峡あるいは津軽海峡を通ります。そのため、津軽海峡や宗谷海峡を監視している日本側の非常に優れたレーダー探知網に子細を把握されていると考えるべきでしょう。その積載物などの情報は当然アメリカなども共有し、アメリカを介して、ウクライナ政府やウクライナ国防軍に伝えられていることは、全く明らかです。こうしたことを一つとっても、ロシアからすれば、日本はウクライナに対して加担しており、制裁行為だけではなく、軍事的な行為にも手を貸していると考えるのが国際的常識です。

 こうした観点から、ロシアは日本との平和条約交渉を中止すると通告してきました。これはロシアからすれば当然のことです。もちろん日本からすれば、不法占拠した北方四島に関する継続協議の問題解決によって、日露の平和条約締結を目指すという日本国民、日本政府の基本的な立場を無視したロシアの姿勢に対して抗議はします。しかし、日露関係は政治、経済ともに、制裁から自由ではないので、しばらく私たちはこの北方四島を軸とした日露関係の正常化あるいは発展については、やや悲観的にならざるを得ません。平和条約交渉の打ち...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略
「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓