ウクライナ戦争に揺らぐ国際秩序
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プーチンの核恫喝で生じた「エスカレーションのジレンマ」
ウクライナ戦争に揺らぐ国際秩序(2)エスカレーションのジレンマ
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
今回のウクライナ戦争は、国際秩序に関わるさまざまな問題を提起している。国連安全保障理事会のメンバーであるロシアが、一方的にウクライナに武力侵攻し、核兵器の使用を示唆することで、他国の介入を抑制している。これまで核保有の前提となっていた、相互確証破壊に依拠することはもはやできなくなっているのである。(全4話中第2話)
時間:15分46秒
収録日:2022年4月1日
追加日:2022年5月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●二人のリーダーに対する歴史審判の行方


 皆さん、こんにちは。

 前回、ロシアにおける祖国解放戦争である大祖国戦争の問題について触れました。そして、今ウクライナが戦っている現実こそが祖国防衛戦争であり、これは彼らが好き好んで始めた戦争ではなくて、強いられたものであるという歴史の現実について説明しました。

 そういう困難な状況の中において、ロシア国内では、反戦や戦争への抗議の声を大胆に語る、勇気ある市民たちが出始めています。テレビの画面において、真実を直視することを呼び掛けた(当時)国営放送局のマリーナ・オフシャニコワ制作者はその一人です。彼女の勇気ある使命感は、日本を含め、世界中に静かな感動と尊敬意識を国民の間に呼び起こしました。

 ゼレンスキー大統領とウクライナ国防軍、そして国民は、遠い未来や理想にいたずらにふけるのではなく、すぐそこにある目の前の脅威や危険を除くために、結束して戦わざるを得ない状況になっています。

 ゼレンスキー大統領は、政治と軍事を動かすものが何であるかを現実的に理解しています。そして、それをテレビやメディア、スマートフォンなどを通して訴えかけています。彼はこういう点において、自分の主観的な思い込みと情念にこだわっているとしか思えないプーチンと比較されて、歴史についての将来の審判や評価を受けることになるでしょう。いずれこの大変不幸で不条理な戦争が終わったあと、この二人のリーダーは、そのリーダーシップについて、貸借勘定あるいはバランスシートを付けられることになります。それはロシアの歴史家にとっては大変苦しいものになるでしょう。そしてそれは彼らに課された試金石になるはずです。


●ウクライナ問題が提起する国際秩序の転換と核恫喝の脅威


 しかしまずは、現在のウクライナ、あるいは世界、そして日本について考えなければいけません。ウクライナ戦争の現時点における教訓は、すでに世界に大きな問題を投げかけています。これは3つの点から改めて考えることができます。

 第一は、国際秩序の在り方が転換するという事態です。かつての冷戦の終結とソ連の崩壊、そしてそれよりも前の第二次世界大戦の勃発と終結、さらにさかのぼって第一次世界大戦の勃発と終結は、いずれも大きな世界秩序の変動をもたらしました。今回はそれに匹敵する、あるいは準じる秩序の変更がもたらさ...

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