ウクライナ戦争に揺らぐ国際秩序
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
プーチンの核恫喝で生じた「エスカレーションのジレンマ」
ウクライナ戦争に揺らぐ国際秩序(2)エスカレーションのジレンマ
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
今回のウクライナ戦争は、国際秩序に関わるさまざまな問題を提起している。国連安全保障理事会のメンバーであるロシアが、一方的にウクライナに武力侵攻し、核兵器の使用を示唆することで、他国の介入を抑制している。これまで核保有の前提となっていた、相互確証破壊に依拠することはもはやできなくなっているのである。(全4話中第2話)
時間:15分46秒
収録日:2022年4月1日
追加日:2022年5月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●二人のリーダーに対する歴史審判の行方


 皆さん、こんにちは。

 前回、ロシアにおける祖国解放戦争である大祖国戦争の問題について触れました。そして、今ウクライナが戦っている現実こそが祖国防衛戦争であり、これは彼らが好き好んで始めた戦争ではなくて、強いられたものであるという歴史の現実について説明しました。

 そういう困難な状況の中において、ロシア国内では、反戦や戦争への抗議の声を大胆に語る、勇気ある市民たちが出始めています。テレビの画面において、真実を直視することを呼び掛けた(当時)国営放送局のマリーナ・オフシャニコワ制作者はその一人です。彼女の勇気ある使命感は、日本を含め、世界中に静かな感動と尊敬意識を国民の間に呼び起こしました。

 ゼレンスキー大統領とウクライナ国防軍、そして国民は、遠い未来や理想にいたずらにふけるのではなく、すぐそこにある目の前の脅威や危険を除くために、結束して戦わざるを得ない状況になっています。

 ゼレンスキー大統領は、政治と軍事を動かすものが何であるかを現実的に理解しています。そして、それをテレビやメディア、スマートフォンなどを通して訴えかけています。彼はこういう点において、自分の主観的な思い込みと情念にこだわっているとしか思えないプーチンと比較されて、歴史についての将来の審判や評価を受けることになるでしょう。いずれこの大変不幸で不条理な戦争が終わったあと、この二人のリーダーは、そのリーダーシップについて、貸借勘定あるいはバランスシートを付けられることになります。それはロシアの歴史家にとっては大変苦しいものになるでしょう。そしてそれは彼らに課された試金石になるはずです。


●ウクライナ問題が提起する国際秩序の転換と核恫喝の脅威


 しかしまずは、現在のウクライナ、あるいは世界、そして日本について考えなければいけません。ウクライナ戦争の現時点における教訓は、すでに世界に大きな問題を投げかけています。これは3つの点から改めて考えることができます。

 第一は、国際秩序の在り方が転換するという事態です。かつての冷戦の終結とソ連の崩壊、そしてそれよりも前の第二次世界大戦の勃発と終結、さらにさかのぼって第一次世界大戦の勃発と終結は、いずれも大きな世界秩序の変動をもたらしました。今回はそれに匹敵する、あるいは準じる秩序の変更がもたらさ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
「日本に来れば未来が見える」…希望があるうちにやろう!
小宮山宏
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ショパンの音楽とポーランド(8)ポーランドの苦悩と革命のエチュード
ポーランド分割、11月蜂起…革命のエチュードの真意とは?
江崎昌子
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」
変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人
水野道訓