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「台湾危機は必ず日本を巻き込む」――日米同盟を抑止力に

対中国戦略・日本の決定的な決断(2)台湾問題と日米同盟の抑止力

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
情報・テキスト
「台湾問題」「日本の防衛力強化」「経済安全保障」が日米首脳会談および共同声明において焦点となった3本柱。中でも「台湾問題」は、現在かつてない緊張が始まっている。2020年末から2021年の初めにかけて中国の空軍機がしきりに台湾側の防空識別圏に侵入するようになった。つまり、台湾海峡の空の上では一触即発の危機が常態化し始めているということだ。何かあれば偶発的な戦争になる可能性が格段に高まったということで、アメリカも警戒を強めている。そこで今回の日米首脳会談で、抑止力としての日米同盟を示す必要があったのだ。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:41
収録日:2021/04/23
追加日:2021/05/26
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≪全文≫

●経済分野の安全保障として日米がしっかり協力を進めていく


中西 それからもう一点あります。それはやはり今回の首脳会談の3本柱の最後の1本で、「経済安全保障」です。つまり、5Gの問題や半導体の問題について、日米が同盟国として中国ににらみをきかせること。中国の軍事力増強につながったり、インド太平洋地域の安全保障環境を不安定化したりするような技術的手法、経済でいえばサプライチェーンなどについても中国の動向を注視することです。

 厳しめの言い方をすれば、これは経済的・技術的に中国を囲い込む、ないし封じ込めるような動きになります。中国の軍事力がこれ以上地域の不安定化要因にならないよう、そのための経済分野における安全保障として、日米がしっかり協力を進めていくことです。

 技術の中には軍事的なものもあれば、安全保障上の意味合いを持つものもあります。そういったものを自国の経済国益のために中国に渡してしまったり、流出したりしないようにしようということで、互いに緊密に協議していくことが確約されました。これも、今回の首脳会談の非常に大きなポイントであり、3本柱の3つ目だったと思います。

 つまり、「台湾問題」「日本の防衛力強化」「経済安全保障」の3点において、日米のかつてない緊密な協力が約束されたのだと思います。


●かつてない緊張下に置かれた台湾の情勢


―― まさにその3本柱の1本目として先生がまず挙げられた台湾の部分についてうかがいたいと思います。

中西 はい。

―― アメリカでは、「6年以内に台湾危機が現実化する可能性がある」とインド太平洋司令軍の司令官が議会で証言したという話があります。現在、台湾問題がどのような状況になっているかという点について、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

中西 そうですね、やはり昨年(2020年)は、中国をめぐる世界情勢全般に、非常に画期的な変化のあった年だったと思います。ですから、台湾問題をめぐってもかつてない緊張が始まったのだと思います。

 2020年、新型コロナウイルスがパンデミック化して世界中に広がると、アメリカを中心とした米欧や日本も含めた主要国において、非常に大きな混乱が起こりました。ところが、中国はいち早くそこから脱却できた。そこで、この機会に台湾問題についても、中国の力による台湾の統一あるいは併合に向かう路線を一歩進めておきたい。そのための威嚇や対米牽制に着手し始めたのが2020年だったのだと思います。

 2020年は香港問題をめぐる国家安全維持法が法制化されたことにより、香港の一国二制度は大きく揺らいだと言われました。しかし、2020年夏以降は、焦点が台湾に移っています。2020年末から今年の初めにかけては、中国軍の空軍機がかつてない形をとって台湾海峡の中間線を越え、しきりに台湾側の防空識別圏に侵入するようになりました。


●偶発的な戦争がいつ起きてもおかしくない台湾上空


中西 これは大変危ないことです。日本の場合は海の上で、尖閣諸島の接続水域や領海に中国の公船が入ってきますが、台湾海峡の空の上ではもう一触即発の危機が常態化し始めているのです。もし何かあれば偶発的な戦争になるような危機的状態です。間違いなく偶発戦争の危機が格段に高まったと言えると思います。

 そのことから、ワシントンのアメリカ政府では、この点についての警戒心を一気に高めたのだと思います。これはトランプ政権とバイデン政権を問わず、危機感の強さはまったく同じだと思います。

 そういうことで、今回の首脳会談では、是が非でも台湾をめぐる日米協力体制を中国に見せつける必要があった。日本の果たす軍事的役割に限界があるのは中国もよく知っていることですが、少なくとも日米同盟体制が台湾海峡の平和と安定に非常に重要な力点を置いているのだということを、中国側に示す必要があったわけです。

 これが最低限の共通認識であり、ここがなければアメリカは首脳会談に応じないぐらいの出発点だったと思いますが、日本側もそれはあえて望むところだったわけです。

 なぜなら、「台湾危機は必ず日本を巻き込む」というのが、近年の日本政府のはっきりとした見解だからです。台湾危機が起これば、日本は第三者ではいられない。つまり巻き込まれる。そうだとすると、それを未然に防ぐためには、日米同盟の抑止力を少しでも、あるいは出来得る限り、中国側に分かる形で示しておく必要がある。

 こういうことで日本側も積極的に応じました。これは、「ルビコン川」という竹内元事務次官のレトリックが非常によく当てはまる部分だったと思います。


●「偶発的衝突が大戦争に至る可能性」を確認したバイデン大統領


―― やはり日本がそこまで踏み込んだということは、客観情勢としてかなり緊迫した状況が高まっ...
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