編集長が語る!講義の見どころ
話題のワクチンと免疫の仕組みを知る(特集&内田智士先生)【テンミニッツTV】

2021/06/25

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が急ピッチで進んでいます。その一方で、ワクチンは危険だとする懐疑論も、さまざまに出されています。こういう局面こそ、はたしてワクチンや免疫がどのような仕組みになっているのか、確かな知識を得ておくことが必要不可欠でしょう。

実は、ひと口に新型コロナウイルス感染症ワクチンといっても、現在開発中のものも含めると、いろいろな種類があります。このうち、最近接種が進んでいるファイザー社製のもの、およびモデルナ社製のものは、「メッセンジャーRNAワクチン(mRNAワクチン)」と呼ばれるものです。

しかし、mRNAワクチン……といわれても、いったいどのようなものか、なかなかわかりません。さらにいえば、ワクチンがどのようにして効果を発揮しているのか、ということから、案外よくわかっていないものです。

本日は、このワクチンについて、さらに免疫やウイルスのあり方について、わかりやすく解説いただいた特集と、内田智士先生(京都府立医科大学大学院医学研究科准教授)による最新講義を紹介いたします。

■本日開始の特集:ワクチンと免疫の仕組みを知る

なぜワクチンで感染症は予防できるのか。ワクチンの歴史とは。また免疫機能はどのようなもので、どうすれば高まるのか。そしてウイルスとは……? この機会に、しっかりと学んでおきましょう。

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=121&referer=push_mm_feat

内田智士:コロナだけでなく個別化医療の可能性を秘めたmRNAワクチン
宮坂昌之:まず「病原体を防ぐからだのメカニズム」を知ることが重要
長谷川眞理子:きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
堀江重郎:バイアグラやザルティアも免疫力低下を防ぐ可能性がある

■講義のみどころ:メッセンジャーRNAワクチンとは?その可能性は?(内田智士先生)

内田先生はこの講義で、ワクチンの歴史から、その最新状況まで、わかりやすくお話しくださっています。とりわけ、いま話題のメッセンジャーRNAワクチン(mRNAワクチン)について、とても詳しくご解説いただいています。なんとmRNAワクチンは、新型コロナなどの感染症ばかりでなく、がん治療にも使えるというのですから、見逃せません。

本日(6月25日)段階では、第3話までの配信となっていますが、毎週金曜日の配信で進んでいきます(全5話)。このメールでは先行して、その内容をお伝えいたします。

◆内田智士:感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(全5話)
(1)mRNAとは何か
コロナだけでなく個別化医療の可能性を秘めたmRNAワクチン
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4042&referer=push_mm_rcm1

まず内田先生は、mRNAとは「DNAの設計図を写したものに近い」とおっしゃいます。たとえていうと、「ものすごく分厚い辞典が図書館に眠っているとします。これが細胞の核のなかにDNAが眠っている状態に当たります。それを書き写して、みんなが使いやすい状態にしたものがmRNAというイメージ」ということになるそうです。

そのmRNAを細胞に入れるとどうなるか。実は、mRNAには細胞のなかにタンパク質をつくりだす仕組みが備わっています。mRNAワクチンというのは、病気のウイルスが持っているタンパク質(抗原タンパク質)をつくりだすmRNAを体内の細胞に送り込むものなのです。そうすることで、細胞内で抗原タンパク質がつくられることとなり、それに対する免疫反応を起こせるようになるのです。

この免疫反応の仕組みは、ワクチンの歴史をひもとくと、わかりやすく理解できます(第3話。ぜひこの部分だけでもご覧ください)。人類が最初につくったワクチンは天然痘に対するものだったといわれます。実は経験的に、天然痘に一度かかって治った人は、再感染しないことが知られていました。そこで、弱く感染させてやれば免疫がつくのではないかと考えられ、天然痘の患者から採った水疱の液を手の傷にすり込むことが行なわれていました。ただし、この方法だと致死率が1割もありました。

一方、牛痘という天然痘に似た病気があることも知られていました。牛から人に感染する病気ですが、症状は天然痘よりも軽く、しかも牛痘にかかった人は天然痘にならないことが、経験的にわかっていました。そこでジェンナーが、牛痘の病巣から採った液を、手の傷に接種することを思いつきます。これによって安全に免疫を獲得することができるようになりました。

天然痘の場合は、牛痘という似て非なる病気があったために、これが可能になりました。では、それがない場合はどうするか。ここでパスツールが、狂犬病のウイルスを弱毒化してワクチンにすることに成功します(その方法がどんなものだったかは、ぜひ講義でご覧ください)。

「ウイルスを弱毒化してワクチンにする」という方法が、ここで確立されたのです。ウイルスを弱くする方法としては、ウイルスをつくって、それを物理化学的な方法で死滅させる「不活化ワクチン」や、ウイルスを遺伝子改変して弱らせる「弱毒化ワクチン」などがあります。

しかし、そのような方法には、それぞれ弱点があります。それに対して、ウイルスを使わない新しいワクチンが開発されることになります。mRNAワクチンはその1つ。ウイルスそのものを(弱毒化させたとはいえ)体内に送り込むワクチンではなく、それ自体では病気を起こさないタンパク質を生成させることで、ある意味では身体を「だまし」て抗体をつくるのがmRNAワクチンなのです。

「この方法の一番いい点は、ウイルスを使わずにつくることができ、さらにインフルエンザであろうが、コロナであろうが、ジカ熱であろうが、全てのウイルスで同じような設計・製剤ができることです。これは非常に素早く製造できるので、今回のようなパンデミックで非常に活躍する方法です」。そう内田先生はおっしゃいます。

このmRNAワクチンが具体的にいかに働くかは、ぜひこの講義の第3話をご覧ください。第4話では、mRNAワクチンが、「がん」に効く仕組みが解説されます。また第5話では、「なぜ新型コロナウイルスのmRNAワクチンが、きわめて短期間に開発されたのか」「日本がなぜ開発に遅れてしまったのか」、さらに「オーダーメイドのワクチンの可能性」まで言及されます。

現在のワクチン医療の最前線を知ることができる講義です。まさに、いま知っておくべき内容といえましょう。ぜひご覧ください。

(※アドレス再掲)
◆特集:ワクチンと免疫の仕組みを知る
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=121&referer=push_mm_feat

◆内田智士:感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4042&referer=push_mm_rcm2


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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は、「脳の活性化と咀嚼」についての問題です。ではレッツビギン。

噛んで食べることによって、脳の血流量が増加します。(中略)脳の活性化には、実は「    」も有効です。

さて「    」には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3439&referer=push_mm_quiz


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。

さて最近、『最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方』 (SB新書) という本を読み始めています。
https://www.amazon.co.jp/dp/4815607117

この本は、ご存じの方もいると思いますが、前・千代田区立麹町中学校の校長として宿題や定期テストの廃止など大胆な学校改革に取り組んだ工藤勇一氏と、脳神経科学の分野で活躍する青砥瑞人氏による共著です。

なぜこの本を読み始めたかというと、近年、脳の研究がかなり進んでおり、今後のテンミニッツTVのためにも参考になる話がいろいろと読めるではないかと感じたからです。また、この本のメインテーマは教育や育児、子育てですから、そういったテーマでも注目しております。
ちなみに、気になるキーワードとしては「心理的安全性」や「自己肯定感」、あるいは「メタ認知」などがあり、具体的にどのような学びが得られたのか、機会があれば、またご紹介できればと思います。

ということで、今後も興味深いテーマがあれば、新たな特集の検討や、新しい講義の収録および配信を進めていきたいと考えております。