編集長が語る!講義の見どころ
五輪サイバーテロ?台湾危機?「ハイブリッド戦争」の脅威【テンミニッツTV】
2021/06/29
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
2018年の平昌オリンピックの開会式のとき、一瞬、韓国のオリンピックのサーバーがほぼすべてダウンしたことをご記憶の方が、どれほどいらっしゃるでしょうか? これはサイバー攻撃によるものだといわれます。実は、「東京五輪の妨害を狙って、ロシアがサイバー攻撃を計画している」…などといった話も、さまざまな筋からまことしやかに指摘されています。
加えて、「台湾危機が起きるのではないか」ということが、いま真剣に論じられています。米中の対立は、きわめて深く激しいものとなっており、世界各国の中国を見る眼も厳しさを増しています。今後、中国への風当たりがますます強くなるなかで、たとえば中国国内の経済状況が悪化した場合など、中国共産党が活路を見いだすべく「中国の主権や領土保全、核心的利益に関わる」と位置づける台湾に食指を動かす可能性が、とみに指摘されているのです。
さまざまな「有事」の危険性が指摘されていますが、「有事」といっても、われわれが考える「戦争」とはまったく異なった姿の危機となる――そのことを十分に考えておかなければなりません。なぜなら、2014年のロシア軍のウクライナ侵攻は、まさにそのようなかたちで行なわれたからです。では、いったい何が起きうるのか。さらに日本への影響は?
本日はそのことを衆議院議員で元防衛大臣の小野寺五典先生に解説いただいた講義を紹介いたします。小野寺先生は、ロシアによるウクライナ侵攻を「いつ起きたかわからない戦争」だったとおっしゃいます。
◆小野寺五典:戦争の常識を覆すハイブリッド戦争にどう立ち向かうか(全1話)
宇宙、電磁波、サイバー攻撃…ハイブリッド戦争の恐怖とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2979&referer=push_mm_rcm1
「いつ起きたかわからない」ウクライナ侵略とは、どのようなものだったか。最初は、何の組織だかわからないような民間人のデモが、港湾施設や鉄道電力施設などで展開されます。そうこうしているうちに、ウクライナ全土で携帯電話が使えなくなる。偽のSNSが流される。大規模停電が主要都市で起きる。そうこうしているうちに、デモ隊がいつの間にかロシア民兵に変わっていて、重要施設を占領される……。
「これはロシア軍の侵攻だ」。ようやく気づいたウクライナ軍が偵察のためにドローンを飛ばしても、次々に墜落してしまう。大砲を撃っても、すべて不発弾になってしまう。ウクライナ軍はまともな戦いもできぬままに、ロシア軍に完全占領されてしまったのです。
これこそ、民兵の浸透戦略と、サイバー攻撃、宇宙からの妨害電波、電磁波攻撃などを組み合わせた「ハイブリッド戦争」だったのです。このような動きを、小野寺先生は詳細に解説くださいます。なにしろ、防衛大臣を務めた方のお話ですから、まさに震撼させられます。
さらに冒頭で指摘したように、2018年の平昌オリンピックの開会式へのサイバー攻撃の例もあります。万一、台湾危機のような事態になったら、否、そうなる前から、日本が何らかの攻撃に直面する可能性も、きわめて高いといえるでしょう。東京五輪が、格好の「演習」の対象にもなることも、十分に考えられます。
小野寺先生は、次のようなご指摘もされています。
《平昌オリンピックの開会式のとき、作動したウイルスが入れられたのがいつだったのかを調べたところ、開会式の半年ほど前だったそうです。さらに、コンピューターに入るために必要なアクセス権を持つ幹部のパスワード等が盗みとられたのは1年前だったそうです》
《ウクライナはその後もずっとロシアの影響を受け、大統領が交代しました。コメディアン出身の方です。このことからもわかるのは、ハイブリッド戦はずっと仕掛け続けることで相手の政治体制にまで影響を及ぼすことができるということです》
ウクライナ侵略から数年を経て、ハイブリッド戦争の技術はさらに高度化しています。はたして、日本はそのような事態にどのように備えようとしているのか。課題はどこにあるのか。それを小野寺さんはお話くださいます。
「いつ起きたかわからない戦争」で、取り返しのつかないことにならぬよう、ぜひとも学んでおきたい講義です。
(※アドレス再掲)
◆小野寺五典:戦争の常識を覆すハイブリッド戦争にどう立ち向かうか(全1話)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2979&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「時代は人物を要請し、人物は時代に応えることが重要だ」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1235&referer=push_mm_hitokoto
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佐藤一斎は明治維新の志士を育てるために生まれてきたような人物なのです。
私はよく、「時代は人物を要請し、人物は時代に応えることが重要だ」と言っています。このようになっている国家は非常に発展、繁栄するけれど、そうでないところ、つまり、時代が要請してもなかなか人物が現れないというような国家はやはり衰退してしまいます。これは、企業なども拝見していると、全く同じことが言えます。
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて一昨日の27日(日)より長谷川眞理子先生による新シリーズ講義「人新世とは何か~人類の進化と負の痕跡」が始まりました。
なぜ人新世が提唱されたのか、地球と人類の歴史から考える
(1)地球史と人類の進化史
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
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人新世とは、現在の地質区分のなかに新しい時代区分として提唱された考え方ですが、どうしてそうしたことが提唱されることになったのか、その意味と背景などについて解説する、とても興味深いシリーズ講義です。
第1話と第2話の同時配信だった27日(日)に続き、第3話も大事なお話が続きます。7月4日(日)配信予定です。ぜひご視聴ください。
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