編集長が語る!講義の見どころ
五輪の場でアスリートたちは何を考えているか(為末大先生)【テンミニッツTV】

2021/07/27

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
オリンピックの熱戦が続いています。テレビを通しても、アスリートたちの極限の緊張感が、ひしひしと伝わってきます。だからこそ、勝負が決まったときの嬉し涙、悔し涙は、見ている者の胸を打ちます。

オリンピックの勝負の場に臨む気持ちがいかなるものかは、まさに想像を絶します。はたして、世界最高峰の大会で、メダルを懸けて争う一流のアスリートは、「自分のベストパフォーマンス」を発揮するために、どんな発想をし、いかなる準備をしているのか。

本日は、そのことを為末大さんにうかがった、とても興味深い講義を紹介いたします。為末さんは、皆さまご存じのとおり、陸上の400メートルハードルで、2001年世界陸上エドモントン大会と2005年世界陸上ヘルシンキ大会で銅メダルを獲得されました。これは、スプリント種目の世界大会で、日本人初のメダルでした。さらにオリンピックには2000年シドニー、2004年アテネ、2008年北京の3大会連続で出場されています。

為末さんの本講義を視聴すると、「一流のアスリートは、ここまでのことを考えているのか」と、圧倒されます。スプリント種目での初のメダリストである為末さんは、圧倒的に強い海外の選手たちと次々と戦ってきたわけで、その経験に裏打ちされた深い洞察は、胸に響くものばかり。

オリンピックを見る楽しみも、グッと増すことうけあいです。この五輪開催中の時期だからこそ、見ておきたい名講義です。以前に受講された方も、ぜひ再度、ご覧ください。胸に響くポイントがまったく変わってくるかもしれません。

◆為末大:本番に向けた「心と身体の整え方」(全8話)
(1)ディテールにこだわる
集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3846&referer=push_mm_rcm1

質問に対して、為末さんが的確に次々とお答えになる内容は、まさに圧巻。日頃から深く考えていないと、色々な角度からの質問に対して、ここまで具体的に答えられないはずです(ちなみに、この質問のかなりの部分は、当日のインタビューの流れのなかで生み出された即興的なものです)。

たとえば、第1話で出てくる為末さんのお話しを1つだけご紹介しましょう。

《(本番でベストな力を発揮するために)事前準備である身体の反復に加えて、頭の中に具体的な細かいディテールをイメージしていきます。例えば、風がどう吹いているか。ゴールした瞬間にインタビュアーはどこにいるか。何秒後にインタビュアーはこちらに来るか。マイクは何色か。どのタイミングで自分は泣くのか。そういうのを全部やっていきます。身体の動きのシミュレーションはすぐに済むのですが、心の中の、情動の部分、感情がどう動くかということも一緒にイメージをしていきます》

まるで、競技場に立つアスリートの姿まで目に浮かんでくるようなお話です。このような深い洞察に基づいた具体的な方法論や考え方が、以下のような数多くのテーマについて、次々と展開されます。

●本番で力を発揮するために
●試合で崩れるパターン
●集中のスイッチを入れる方法は?
●火事場の馬鹿力はあるのか?
●記録では絶対に負ける格上の相手と戦うときの心の整え方
●そもそも「ピークを合わせる」とはどういうこと?
●本番のプレッシャーにいかに打ち克つか
●良い自信、悪い自信
●「場数」によって勝ちやすさはどう変わるか?
●どうすれば「大舞台」を楽しめるのか
●「周囲からの期待」との戦い方
●「限界」と「可能性」をいかに見極めるか
●岩盤にぶつかったときの考え方
●プロと素人の「見る目」はどこが違うか?
●「スランプ」の抜け出し方
●「違う刺激を入れてみる」と「迷走」の違い
●コーチと選手の望ましい関係性は?
●「自分の強み」で勝てなくなったときの発想法
●失敗を生かせる人と、潰れてしまう人の違い

この講義を視聴したかしなかったかで、スポーツを見る眼も、さらにもしかしたら自分自身の人生も変わるのではないでしょうか。世界の第一線で強豪たちと真剣勝負を重ねてきた方の考え方を学ぶのは、なんと贅沢(ぜいたく)なことだろうと、しみじみ実感できる講義です。

(※アドレス再掲)
◆為末大:本番に向けた「心と身体の整え方」(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3846&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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「若い人、学ぶ人は一人にしておいては駄目だ」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3999&referer=push_mm_hitokoto

デカルトはなぜ「学ぶ人は一人にしては駄目」と言ったのか
津崎良典(筑波大学人文社会系准教授)
五十嵐沙千子(筑波大学人文社会科学研究科准教授)

1628年頃、デカルトが32歳の時に書き上げられなかった本があって、『精神指導の規則』というなかなか意味深なタイトルです。精神を指導するための規則のなかで、こんなことを述べているんだよね。

若い人、学ぶ人は一人にしておいては駄目だと。やっぱり教師が一緒になって学んでいかなきゃいけないということを言っている。そうしたほうが、たとえそれが間違った道だったとしても、どこかにはたどり着くことができるだろう。あるいは、そこまでいかずとも、少なくとも正しい道を一緒に歩いていくことができるだろうと。


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今週の人気講義
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聖徳太子の1400回忌、「実在しなかった」説の真相に迫る
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授/奈良大学 名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4095&referer=push_mm_rank

『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4001&referer=push_mm_rank

なぜ徳川吉宗は大奥で非常に評判が良かったのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授)
神藏孝之(松下幸之助記念志財団専務理事/松下政経塾副塾長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4091&referer=push_mm_rank

新1万円札の顔・渋沢栄一の知られざる生い立ちに迫る
田口佳史(東洋思想研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4101&referer=push_mm_rank

なぜ人新世が提唱されたのか、地球と人類の歴史から考える
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4057&referer=push_mm_rank


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて先週木曜日(22日)より新シリーズ講義<教養としてのナノテクノロジー>の配信が始まりました。

◆<教養としてのナノテクノロジー>(全10話)
(1)科学における教養とは何か<前編>
人類に課せられたナノテクノロジーの使命と教養の重要性
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4111&referer=push_mm_edt

この講義は、松本洋一郎先生、山本貴博先生、由井宏治先生、元祐昌廣先生の四人がナノテクノロジーについて各専門分野からの視点で解説されている貴重な講義です。
松本洋一郎先生(東京大学名誉教授/外務大臣科学技術顧問)は収録当時、東京理科大学の学長で、山本貴博先生、由井宏治先生、元祐昌廣先生は東京理科大学で現在、理学部物理学科教授、理学部第一部化学科教授、工学部機械工学科教授をそれぞれ務められています。

本日(7/27)時点で配信中なのは1話目だけですが、2話目以降もたとえばナノテクノロジーの可能性、ナノテクノロジーを利用する際のポイントなど、興味深い話がいろいろと展開されます。ぜひ続けてご視聴ください。