編集長が語る!講義の見どころ
老いと幸せの関係(特集&長谷川眞理子先生のLIFESPAN講義)【テンミニッツTV】
2021/08/27
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
テンミニッツTVでも「幸福論」の講義は大人気です。やはり「幸福とは何か」「どうすれば幸福になれるのか」ということは、多くの方々にとって欠かせぬ問題意識なのでしょう。「幸福とは何かについて考えればこそ人生が充実する」ことは、間違いなくあると思います。
では、「年齢」は幸福にどのような影響を与えるのでしょうか。本日はそんな視点から講義をピックアップした特集と、そのなかから、長谷川眞理子先生がベストセラー書籍『LIFESPAN』についてお話しくださった講義を紹介いたします。本書を翻訳刊行した出版社のキャッチコピーによれば、「ついに科学によって老化のメカニズムが解明され、人類は老いない身体を手に入れる! ハーバード大学の世界的権威が描く衝撃の未来!」というのですが……。
■本日開始の特集:「老い」と幸せの関係
「幸せに気をつけると長寿になる」という研究結果があるそうです。では永遠の命を手に入れれば幸せなのでしょうか。人生100年時代を迎えた現在、「老い」についてどう考え、どう行動すればいいか、示唆を与えてくれる講義を厳選しました。
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=129&referer=push_mm_feat
長谷川眞理子:『LIFESPAN 老いなき世界』が突き付けた永遠の命の意味
出口治明:「悠々自適」は定年を正当化するための神話にすぎない
秋山弘子:「エイジング・イン・プレイス」の考え方と取り組み
前野隆司:社員を幸せにする「幸福経営」は欧米では常識となっている
■講義のみどころ:『LIFESPAN』が突き付けた永遠の命の意味(長谷川眞理子先生)
上述のとおり、本日ピックアップするのは、長谷川眞理子先生に『LIFESPAN(ライフスパン)~老いなき世界』(東洋経済新報社)を読み解いていただいた講義です。本書は、2020年9月に邦訳版が刊行されていますが、日本でもすでに10万部を超えるベストセラーになっています。
これを書いたのは、ハーバード大学医学大学院のデビッド・A・シンクレア教授と、ジャーナリスト・作家のマシュー・D・ラプラント氏ですが、いったいどのようなことが書いてあるのか。そして、それをどのように考えればいいのでしょうか。
◆長谷川眞理子:老いなき世界が告げるもの~永遠の命は本当に必要なのか~(全1話)
『LIFESPAN 老いなき世界』が突き付けた永遠の命の意味
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4060&referer=push_mm_rcm1
デビッド・シンクレア教授は「生きものはどうして老化(エイジング)をするのか」のメカニズムを研究している学者です。長谷川先生は、シンクレア教授の説く老化のメカニズムを次のようにわかりやすくご説明くださいます。
《(人体の)細胞は太陽、紫外線、放射線など、いろいろなストレスを始終受けています。細胞にストレスがかかると、その細胞で何とか修復しようと防御するシステムにスイッチが入って発動します。
このようなストレス防御のスイッチの仕様は「エピジェネティック」と呼ばれます。それは、初めから遺伝子上で決まったことをするのではなく、何かの刺激があると動員するシステムにスイッチが入るという働きです。
長生きするほど、そういうことが何度も何度も起こる。そのスイッチを何度も何度もやっているうちに、どうもうまくいかないことがたまってきて、全ての細胞が普段通りに正常な働きでなくなる。これが老化である。そのことを彼は、遺伝子その他で発見したわけです》
シンクレア教授は「老化は病気であり、治療できる」と考えて、「使いすぎてうまく作動しなくなったスイッチをもう一度新しくすることができるサプリ」をつくりました。老化を「治療」すれば、「30代ぐらいのからだの状態で、120歳以上の年齢まで生きられるかもしれない」というのです(いってみれば、本書はそのサプリの効用を説く本でもあるわけです)。
そのうえでシンクレア教授は「人間は死ぬから、後世のことを考えずに現時点での快を追求している。だから、環境問題などのツケを後世に押しつけている。しかし、長生きするようになったら将来の責任を取るようになる」と主張している――そのようにまとめたうえで、長谷川先生は次の言葉を発します。
「結構だと思いますよ。結構だと思いますが……」
ここで長谷川先生が強調されるのは、シンクレア教授が「メカニズム」を研究する人だ、ということです。メカニズムを研究している人は、どうしてもそれを直したくなる。しかし、長谷川先生のように、「全体システムがどうなっているか」を研究している学者からすると、「ちょっとね……」と思わざるをえないというのです。
長谷川先生は、「文明をつくってきた人間は『自分は動物である』という原点を崩してきたが、その動物性を最終的に崩すのが『永遠の命』という考え方ではないか」とおっしゃって、次のように指摘されます。
《彼が考えている「いい未来」というのも、決して「いい」だけにはならないと思う。もともと考えていたように技術が進み、それだけで終わったということはなく、必ず予期せぬ悪いことが次々に起こってきます》
《人間がどのように生態系を破壊しつつ、この文明を築いてきたかという動きの真っ盛りの中で「死なないようにする」「元気で生き続けるようにする」というのは、私からすると、自己中心的すぎるというか、究極の欲望満開のような気もします。「あきらめ」というものが死語になる。そして、滅びるがゆえに考えてきたいろんな知恵、滅びるものだからこそ考えた英知、例えば小説や物語も、全て無意味になるのではないでしょうか》
まことに重要な問題提起といえるでしょう。全1話の講義ですが、長谷川先生のひと言ひと言にハッとさせられます。「人間の欲望」と「無常」のバランスについて、さまざまなことを考えさせてくれる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆特集:「老い」と幸せの関係
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=129&referer=push_mm_feat
◆長谷川眞理子:老いなき世界が告げるもの~永遠の命は本当に必要なのか~
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4060&referer=push_mm_rcm2
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レッツビギン! 穴埋め問題
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今回は、「子育て」についての問題です。ではレッツビギン。
男の子と女の子は生まれた瞬間から、実は「 」が違うといわれています。
さて「 」には何が入るでしょう。答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4138&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
さて編集長が紹介しました本日配信開始の特集ですが、実は個人的にそのラインナップのなかにいれたかった講義があるので、紹介いたします。
人生100年時代におけるリカレント教育の重要性
伊藤元重(東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2067&referer=push_mm_edt
この講義は人生100年時代の時間配分と大学の役割についてのお話ですが、そのなかで伊藤先生はこう述べています。
「65歳あるいは70歳になってもまだ元気で、ただ仕事をあくせくするのではなくもう少し人生を楽しみたいというときに、そのための一つの方法として知的なものにもう一回取り組んでみる」
これに一役買っているのがテンミニッツTVなのですが、知的なものへの取り組みはいくつになっても面白く、そのなかで訪れる新発見、再発見、大発見がまたたまらなく、その瞬間に幸せを感じてしまうのは私だけでしょうか。
ということで、よろしければこの講義も合わせてご視聴ください。
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