編集長が語る!講義の見どころ
カーボンニュートラルに出遅れた日本の危機(猪瀬直樹先生)【テンミニッツTV】

2021/09/14

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
えてして人は、「得意」なもので足をすくわれるものです。もしかすると日本経済も、これまで「得意」だと考え、自信を持ってきたことから崩れていくのかもしれない。本日は、そう痛感させられる講義を紹介いたします。昨今、急速に進む世界的なカーボンニュートラルへの動き、自動車の電動化、自然エネルギーについて猪瀬直樹先生に論じていただいたものです。

猪瀬直樹先生は『カーボンニュートラル革命』(ビジネス社)という本を発刊されましたが、その本を書くために取材を進めるなかで震撼されたといいます。猪瀬先生は次のようにおっしゃいます。

《日本は環境技術先進国だと日本人は思っています。ところが、実は世界から取り残されているということを新しくデータを入れながら書きました。これはちょっと驚くべき状態です。これで日本は大丈夫なのかと私は思いました》

はたして、どのようなことなのでしょうか。

◆猪瀬直樹:カーボンニュートラル革命と日本の未来(全3話)
(1)EVの普及と日本の現実
カーボンニュートラル革命が今、ビジネス世界で起きている
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4145&referer=push_mm_rcm1

猪瀬先生は、この講義の冒頭で、日本が進んでいると考えていた携帯電話で、日本の製品はあっという間にガラケー(ガラパゴス携帯)として取り残され、世界シェアをたちどころに失った例を挙げます。猪瀬先生はEV(電気自動車)のジャンルで、日本はそうなりかねない、いや、そうなりかかっているというのです。

EV(PHVを含む)の2020年の生産台数では、日本メーカーはベスト10には入らず、かろうじて日産が14位、トヨタが17位です。

さらに猪瀬先生は、2040年にはフォルクスワーゲンとテスラが1000万台のEVを販売しているのに対し、トヨタが現在の生産台数の40%ほどの400万台に減っているとする衝撃のシミュレーション(パイパー・サンドラー社)もご紹介くださいます。

猪瀬先生は、次のように厳しい言葉を発します。

《日本はハイブリッドがあって、燃費も2倍良いというので、わが世の春でした。これはガラケーにiモードを付けただけなのですが、それで日本は満足していました。しかし、気がついてみると世界から取り残されていました》

たしかに日本では、ハイブリッド車が出たことで、環境先進という安心感をもってしまい、油断をしてしまったのかもしれません。猪瀬先生は、電気自動車に積極的な評価を与えてこなかった日本の消費者の認識不足にも厳しい評価を下します。

実は猪瀬先生は、カーボンニュートラルについての書籍を書くにあたって、自らテスラのEVを購入して、体験してみたのでした。そのことで「これはガラケーとスマホの違いだ」と痛感されたといいますが、その体験談は、ぜひ講義本編(第3話)をご覧ください。

なぜトヨタはEV化に踏み切れなかったのか。猪瀬先生は、EVになると部品点数が大幅に減ってしまい、これまで培ってきた下請けの膨大な裾野を維持できなくなることを懸念してのことだと分析されます。

これについて猪瀬先生は、「風力発電に舵を切れ」とおっしゃいます。日本の重電メーカーは風力発電設備の製造でも後れを取り、現在、世界シェアは、シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー、GEリニューアブル・エナジー、そしてヴェスタスの三大メーカーに占められています。ここに挑戦して、新たなジャンルを切り拓いても良いではないかというのです。

さらに日本は、「原子力発電の一本足」で来たために、地熱発電でも、世界で第3位の地熱資源国であるにもかかわらず、気づけば地熱発電量の順位で各国にどんどん抜かされています。

日本の携帯電話が沈んでしまった背景に、日本ならではの「護送船団」があったことはよく指摘されるところです。自動車や自然エネルギーというジャンルについても、日本的な「護送船団」のぬるま湯が大きく足を引っ張ることになるのかもしれません。

現状の厳しい危機的状況がよくわかり、新たな展望を与えてくれる講義です。ぜひご覧ください。


(アドレス再掲)
◆猪瀬直樹:カーボンニュートラル革命と日本の未来(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4145&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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「道徳・不道徳も、誰のために、どういうときに、どういう理由で作られた道徳なのかを考え直すべき」

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4133&referer=push_mm_hitokoto

多様な性が心地よく生きられる社会にするために
長谷川眞理子(総合研究大学院大学長)

多くの道徳は、古い時代の価値観でできています。古い時代とはどんな時代かといったら、家を継ぐことが大事な時代、集団間の闘争の激しい時代です。戦争がある、あるいは(負けたら)家が潰れるなど、集団間の闘争が激しいときは、どうしても子どもを残して次を継いでもらわないといけません。そうしないと、競争に勝てませんでした。そういうときに、きちんと子どもを残しましょうというのが、道徳の一部に取り入れられていきました。

でも今はそうではありません。そうではなく、そのことに関する知識があって、人権についての考え方も分かってきた時代ですから、考え直したほうが良いのではないかというのが結論です。


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今週の人気講義
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ブランド力を高めるために「自社の強み」を徹底的に聞け
田村潤(元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4084&referer=push_mm_rank

10分で分かるバイデン政権
小原雅博(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4156&referer=push_mm_rank

女の子は4歳を過ぎたら女友だちとして接するべし
黒川伊保子(株式会社感性リサーチ 代表取締役社長/人工知能研究者/随筆家)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4140&referer=push_mm_rank

「五族協和」に命を懸けた小澤俊夫・征爾・幹雄兄弟の父
小澤俊夫(小澤昔ばなし研究所所長/筑波大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3606&referer=push_mm_rank

孔子が最も嫌う「巧言令色」から渋沢栄一が学んだこと
田口佳史(東洋思想研究者)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4108&referer=push_mm_rank


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編集後記
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今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて先週土曜日の9月11日は、アメリカで起きた同時多発テロから20年という日でした。小原先生はシリーズ講義<国家の利益~国益の理論と歴史>の第10話で同時多発テロについてお話をされています。

◆小原雅博:国家の利益~国益の理論と歴史(全16話)
(10)冷戦終結と9.11の衝撃がもたらした変化
冷戦下での世界の軍事化・暴力化から9.11同時多発テロへ
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2768&referer=push_mm_edt

「2001年9月11日にアメリカ中枢を襲った同時多発テロは、それまでの安全保障観を一変させました。そして、冷戦に勝利したリベラルな価値-自由や人権、民主主義、法の支配といった普遍的価値-は、イスラム原理主義という過激思想と衝突することになりました。」

そして、米国、また世界は「戦場のない見えない敵との非対称な戦いに放り込まれた」とおっしゃっています。
この後、イラクとの戦いがあり、ISが登場するなどして、世界はますます混迷の色を深めていきました。

ではなぜこのようなことになってしまったのか。日本はどうすべきなのか。この機に改めて歴史を振り返り、考えるべき大事なテーマではないでしょうか。ぜひシリーズを通してご視聴ください。